角膜に炎症が生じ、激しく痛む

角膜とは、眼の表面のくろめの部分の、厚さ0.5mm、直径10mmの透明な組織です。
5層構造をしていて、表面の方から、角膜上皮、ボーマン膜、角膜実質、デスメ膜、角膜内皮細胞、と呼ばれています。
角膜5層

 

角膜炎は、角膜上皮に傷がついたり、感染をおこしたりする病気です。
角膜は5つの層のうち、どこにどの程度の炎症ができたかによって厳密には病名が違います。
また一般の診察では原因によって違う病名で呼ぶこともあります。

 

  • 表層性角膜炎
    角膜の表層(角膜上皮またはその下の浅い部分)の炎症

 

  • 深層性角膜炎
    より深い部分の炎症

 

 

  • 潰瘍性角膜炎
    炎症が深く角膜の深部まで進みボーマン膜を越えると角膜潰瘍になります。
    シーズーがダントツに角膜炎(角膜潰瘍)になりやすい犬種です。
    それ以外ではフレンチブルやチワワのように眼が目立って見える短頭種に多くみられます。
    柴犬は少ないようです。

 

  • その他
    急性角膜炎、慢性角膜炎、乾性角膜炎など

 

 

 

 

 

症状

角膜に炎症ができると、かなりはげしく痛みます。
そのため犬は、目を気にする動作を頻繁に繰り返します。目をとじたままにしたり、まぶたをしきりに開閉したり、前足で目をこすったりします。
顔を床にこすりつけて痛がることもあります。

また、涙をたくさんこぼして目のまわりを濡らしたり、目ヤニでまぶたのまわりをよごしたりします。
目をこするために、まぶたのまわりが二次的に赤く腫れることがあります。

炎症が軽い場合には、痛みがそれほど強くないこともありますが、炎症が広い範囲に及ぶ角膜潰瘍などでは、痛みはとても強く、まぶたのけいれんなども起こります。

 

見てわかる角膜の変化

肉眼でわかる角膜の変化は、角膜炎の程度によってだいぶ違います。
小さな炎症ができている程度では、目で見てもほとんどわかりません。
炎症が中程度になると角膜が白く濁り、角膜炎であることがはっきりわかります。

さらに悪化すると、白くにごった角膜表面が盛り上がり、そのまわりに以前にはなかった血管が生じているのがわかります。

これは、炎症を治すために新たに生じた血管で「パンヌス(新生血管)」といいます。

こうなると、角膜炎も慢性化して、かなり悪化していると考えられます。
パンヌスなどの新生組織は、炎症そのものが治った後も黒く残り、角膜の透明度を下げることになります。

とくに角膜潰瘍では角膜表面の変化が目立ちます。
多くのパンヌスや結合組織が生じて白く盛り上がり、角膜が歪んで見えます。

 

 

 

 

原因

角膜炎は外傷性のものと非外傷性のものみ分けられます。

外傷性の原因はさまざまです。

  • 目をこする
  • 目をぶつける
  • シャンプーなどの薬品が目に入る
  • まぶたのまわりの毛やまつ毛が目を刺激する
  • 酸やアルカリなどの薬剤、点眼薬

 

非外傷性のものとしては

  • 細菌
  • カビ
  • アメーバの感染
  • ウィルス(犬ジステンバーウィルスなど)による感染症
  • 肝炎
  • 代謝障害
  • アレルギー反応
  • 紫外線

 

通常、角膜の表面は角膜上皮という組織で覆われており、簡単には微生物が進入できないような構造になっています。しかし、何らかの原因で角膜上皮に傷ができてしまうと微生物が付着し繁殖しやすくなります。
角膜感染症を起こす主な微生物として、細菌・真菌(病原性を有するカビ)・アカントアメーバ・ヘルペスウイルスなどがあります。
ウィルスによるものでは、イヌ伝染性肝炎による角膜炎「ブルーアイ」が有名です。
これは、角膜が青白くにごり、目が青色に染まったように見えます。
この症状は長く残ることがあります。

 

 

細菌性角膜炎

細菌が原因で起きる角膜炎のことで、細菌の種類によって発症のスピードや程度はさまざまです。

原因

細菌性角膜炎は角膜から細菌が感染することで引き起こされます。
目に異物が混入した場合や、外傷、ドライアイなどです。
おもな細菌はブドウ球菌、肺炎球菌、緑膿菌などがあげられます。

 

症状

強い目の痛み、大量の涙や、目ヤニがでます。
また、角膜の一部に白い濁りが生じたり、白目に充血が見られます。
角膜のにごりのために視力が低下することもあります。

治療が遅れた場合には角膜に障害が残り、視力が回復しないこともあります。
基本的に片目だけに症状が出ます。

 

 

真菌性角膜炎

真菌とは病原性カビの一種であり、これによる角膜感染症を真菌性角膜炎と呼びます。健康な角膜には真菌が進入するということはほとんどなく、この病気自体まれなものです。

原因

もともと目に持病があり、抵抗力が落ちているような場合では発症しやすいといわれています。
また、植物の枝で目を突いてしまったとか、土埃のついた異物が飛入したといった原因で起こることもあります。
糸状菌などは植物の表面や土壌に生息しているため外傷の影響が原因と考えられます。

 

症状

細菌性角膜炎と類似しています。

  • 角膜内皮面に円盤状の白色、またはグレーの境界不鮮明な病巣が付着します。
  • 前眼房の強い炎症
  • 前房底部に膿汁がたまる状態、前房蓄膿になる。

前房

 

特徴

前眼房にまで感染が進んでいる状態でも、角膜の層構造があまり破壊されないのが特徴です。
治療を行ったものの感染が進行してしまった場合、融解がはじまり角膜穿孔に至ることもあるようです。

また角膜上皮下のとても浅いところだけに病巣ができる場合もあり、この場合は進行が遅く、炎症もあまりおこらないので他の病気と識別しにくい場合もある。

 

 

治療は、カビに効果のある抗真菌薬の点眼や内服薬によって行いますが、治癒するまで長期間要することもあります。

 

 

アカントアメーバ角膜炎

アカントアメーバは、土の中、家のほこり、水の中、水道水ですら存在しているごく普通にいる微生物です。
通常は無害ですが、角膜に傷がついていると侵入される可能性がでてきます。

アカントアメーバ角膜炎になる可能性はとても低いですが感染してしまうと厄介です。
特効薬ががまだ存在していないからです。抗真菌薬を使用しますが十分とはいえません。

治療は病巣掻爬が中心です。
これは感染した角膜を削り取っていくことを繰り返し行います。治療も長期になるでしょう。
感染の収まったあとも、角膜は白く濁り、血管が入りこんで視力も低下してしまいます。



角膜ヘルペス

ヘルペスウィルスの影響で角膜炎になるパターンです。
ヘルペスは猫は猫ヘルペス、犬は犬ヘルペスに感染しそれぞれ他の種にはうつりません。
猫ヘルペスは猫しかうつらない。人にうつったりしないということです。

目や鼻に症状が現われます。
涙や目ヤニ、目をしょぼしょぼさせたり、目の表面が白くなったりします。

 

 

 

治療

角膜炎の治療は、まずその原因をとりのぞき、病気を治療することから始めます。
したがって原因が何かを良く確かめる必要があります。

次に、角膜の炎症に対して、1種類から数種類の点眼薬を用いて内科療法を行います。

犬が痛がって目をこするために、角膜炎が悪化することもあります。そのような場合にはエリザベスカラーなどをつけて目をこすれないようにして目を保護することもあります。

治療がうまくいって角膜炎そのものが治っても、角膜の表面が白や黒ににごったままになってしまうことがあります。
早期に治療を行えばこれをふせぐことができるので、目の治療は早めに受けるようにしてください。