副腎から持続的にホルモンが過剰に分泌されることによってさまざまな症状や異常が起こる病気です。
このような病態の総称でクッシング症候群と呼ばれています。

 

 

 

クッシング症候群の発症率

人間
10万人に1人 500頭に1頭

人間の場合は、発症率がおよそ10万人に1人の非常にまれな疾患である。
しかし、犬の場合、約0.2% (500頭に1頭)の発症率で、比較的よく認められる内分泌疾患の一つになります。

クッシング症の症状

  • 水をたくさん飲むのでおしっこの量が増える。
  • 食欲が異常に旺盛のわりに痩せていく
  • 皮膚病ではないのに、左右対称に脱毛がおこり、被毛がパサパサになります。
  • おなかが膨れる

 

病気が進行すると、元気がなくなり、寝てばかりいるようになります。
免疫が低下するために、感染症にかかりやすくなります。

 

皮膚のトラブルが多い

  • 皮膚が薄くなる
  • 毛が薄くなる
  • 毛が抜ける
  • 皮膚感染症が治りにくい
  • 石灰沈着が起こる

などの皮膚トラブルが起こります。

 

 

合併症

免疫力の低下やホルモンの異常分泌により、さまざまな合併症が起こります。

 

  • 糖尿病
  • 高血圧
  • 膵炎
  • 感染症(皮膚、膀胱など)
  • 肺血栓塞栓症
  • 敗血症

 

などがあります。

また、治療しないで放置すると最終的にはこれらに発展し死に至る疾病です。

 

 

なりやすい犬種

どの犬種にも発症しますが、特に下記の犬種は発症しやすい傾向があります。

  • ダックスフント
  • プードル
  • ポメラニアン
  • ボストン・テリア
  • ボクサー

 

年齢

おもに6歳以上の犬に多く見られます。
1歳未満の若齢犬が発症することもあります。

 

 

 

 

クッシング症の3つの原因

副腎から過剰に分泌されたコルチゾールというホルモンによってさまざまな症状が現われる病気です。
血液中のコルチゾールが過剰になる原因には、大きく3つあります。

脳下垂体や副腎の腫瘍や、 アレルギー疾患などの治療で用いられるステロイド薬などが考えられます。

 

 

1.下垂体 依存性 副腎皮質機能亢進症(PDH)

 

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下垂体に腫瘍できることによって副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)の分泌が過剰になっています。
クッシング症候群の約80~85%はこの下垂体が原因です。

5歳以上の(多くは8歳以上の)犬で発生し、雄より雌でやや多く、好発犬種は特に無いと言われています。

 

神経症状が起こることがあります

脳

90%くらいは良性の腫瘍ですが、下垂体に腫瘍ができて、大きくなると隣接する組織を圧迫することがあり、背側にある視床下部や視床まで達すると、神経症状を引き起こします。
およそ20%くらいの犬で神経症状が現れることがあります。

 

症状としては
  • 元気がなくなる
  • けいれん
  • 食欲低下
  • 認知症のような症状が出る
  • 同じ方向に回り続ける
  • 視力障害が起こる

 

 

下垂体腫瘍の治療

 

1年目 2年目 3年目 4年目
84% 76% 72% 68%

腫瘍の外科手術による摘出は生存率は良好というデータがあります。
しかし、術後の合併症も報告されていて乾性角結膜炎や中枢性尿崩症が高率で認めれらるようです。

また1㎝を超える腫瘍については手術による摘出は困難である。

下垂体の腫瘍は良性であることがほどんどですが、腫瘍が巨大化した場合は重篤な神経症状が起こります。
このような場合は放射線療法が効果的です。

 

放射線治療

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下垂体巨大腺腫に対しても治療可能であり、生存率は比較的良好な治療法です。

治療法

Gy(グレイ):吸収線量

物質がどれだけ放射線のエネルギーを吸収したかを表す量です。

総線量36~48Gyを腫瘍に3~4Gyずつ連日照射します。

 

そのさいには毎回、全身麻酔の処置が必要なので治療費が比較的高額になること。
飼い主の来院頻度が多いので様々な面で負担が大きくなります。

 

 

生存率

1年目 2年目 3年目
93% 87% 55%

 

しかし、放射線治療によって腫瘍の縮小が起こり、神経症状が軽減ないしは改善するが、どの程度の縮小で反応が出るかは不明です。

さらに、腫瘍の縮小により副腎皮質刺激ホルモンの分泌が減ることにより、副腎皮質ホルモンの分泌も減少する可能性があるが、ほとんどの場合は副腎皮質機能亢進症の内科治療は併用・継続する必要がある。

 

 

放射線治療の副作用

放射線治療をするということは少なからず被ばくします。
そのため、主に放射線が通過した部分に症状が見れます。

急性障害と晩期障害に分けられます。

 

急性障害

放射線治療中または修了直後に見られる症状です。

  • 皮膚炎
  • 脱毛
  • 粘膜炎
  • 白血球数減少

これらは時間と共に軽快します。

 

晩期障害

晩期放射線障害の原因は、照射により細胞の組織が繊維化したり、血流障害が起こるためといわれています。

  • 耳道炎
  • 被毛の脱色
  • 難聴

など放射線の通過した場所にもよります。

多くの場合、症状はもとに戻らない。
しかし、放射線治療を行ったすべての動物で、晩期障害が起こるわけではなく、また時期も数年後の場合もある。

 

 

 

 

2.副腎性副腎皮質機能亢進症(ADH)

 

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副腎に腫瘍ができると、副腎皮質刺激ホルモンは正常な量で分泌されていますが、それを無視してコルチゾールが過剰に分泌されます。

 

傾向

  • 下垂体の腫瘍よりも高齢の犬で発生しやすい。
  • 犬種では、シー・ズーに起こりやすいようです。
  • 副腎の腫瘍はすぐ側にある大血管に入り込むことがあり、出血、塞栓症や突然死のリスクがあります。
  • 副腎腫瘍は副腎皮質機能亢進症全体の15~20%とされています。

 

生じる腫瘍は良性が多い

腫瘍の多くは良性ですが、稀に悪性の副腎皮質ガンができることがあります。
良性の場合でも、ホルモンの分泌を異常にしている場合は、高血圧や糖尿病につながる可能性があるため、治療の必要性が出てきます。

 

悪性の場合

  • 悪性の場合は 副腎皮質ガン

両側性の副腎腺腫または副腎腺癌によるものが原因ですが、非常に判別が難しく、ガンの浸潤や転移したことによってわかることが多いです。

副腎皮質腺腫(良性のときの呼びかた)と比較し、複数のホルモンの過剰分泌と症状がみられます。
癌の完治には手術療法が必要とされますが、癌が進行していると手術による切除ができない場合があるので、早期発見が非常に大切です。

また、腺癌は周辺の組織に浸潤しやすく、または肺、肝臓への転移の可能性も高い。

  • 横隔腹静脈
  • 後大静脈
  • 腎臓

状況によっては手術ができないこともある。

 

良性の場合でも、副腎性副腎皮質機能亢進症になります。

 

 

 

副腎腫瘍の治療

手術で腫瘍を切除します。

片方の副腎に腫瘍がある場合

手術で悪い方の副腎の全摘出手術が最善です。
しかし、全身麻酔することや術後の管理、合併症などさまざまな困難なリスクが伴います。

 

 

 

左右両方の副腎が腫瘍の場合

副腎の腫瘍は両側ともの場合が多いです。
しかし、左右両方の副腎を摘出すれば当然ですが、副腎皮質機能低下症が永続します。
ホルモンの管理など細かい判断が必要になります。
手術は厳しいことが多いでしょう。

悪性の腫瘍だった場合には摘出するという選択肢になりますが、副腎腫瘍の良悪の判定は非常に難しいようです。

 

 

術後合併症

術後の合併症には気をつけなければいけません。

  • 血栓塞栓症
  • 敗血症
  • 膵炎

などがあり、これらになった場合も集中治療や内科的治療が必要になってくる。

合併症を最小限にするために
手術前の処置としてミトタンまたはトリロスタンなどで症状を安定させておく必要があります。
ミトタンには副腎のサイズを縮小させる効果があります。

内科的治療で現状維持を行うか、手術にて完治を目指すか選択する必要がでるでしょう。

 

3.医原性クッシング症候群

s600薬

 

プレドニゾロンなどのコルチゾールと似た働きをする薬を使っている場合、クッシング症候群と同じ症状が出ることがあります。

治療を目的として長期間または高用量でグルココルチコ イド製剤を投薬することにより、クッシング症候群の症状を起こしたりします。

また、短期間または低用量のグルココ ルチコイド投与やステロイド剤の外用によって発症することもある。

 

医原性の治療

薬が原因のときは、使用を中止します。
ただし、急激に薬を減らすと、副腎皮質機能低下症を引き起こしてしまうので、徐々に減量します。
それ以外では、副腎皮質ホルモンの働きを抑える薬を継続的に使います。

 

 

 

医原性の治療

 

 

内科治療

内科治療とは薬によって副腎皮質ホルモンの分泌を抑制することで、症状の緩和、消失をさせる治療法です。

導入治療

手術を行うために前もって症状を抑えたり、腫瘍を小さくするために薬を使います。

 

維持治療

腫瘍を取ったりして手術で治せる場合もあるでしょう。
しかし、手術できない場合もあります。

そんなときの維持治療です。
根本的に治すことはできないので、維持治療は生涯続きます。

 

 

また、症状が軽微な場合や副作用の危険性と比べたとき、治療にかかかる費用など、色々な要因から外科治療か内科治療を選択するかどうかも判断を悩むでしょう。

 

内科治療のお薬

こんな薬で治療をします。

トリロスタン

人の副腎皮質機能亢進症の治療で作られた薬剤です。
人間ではあまり効果が見られなかった薬剤ですが犬には効果が見られました。

トリロスタンはステロ イド合成を抑制する薬です。
有効性が高く、第一選択薬になっています。
副作用は10~25%ほど認められるようです。

 

ミトタン

ミトタンは下垂体性の治療に過去30年以上にわたって使われてきた薬です。
このお薬は副腎皮質の束状層と網状層を壊して、球状層は壊さないという効果があります。

  • 束状層と網状層
    グルココルチコ イドとアンドロゲンの分泌を担う組織

 

  • 球状層
    ミネラルコルチコイドの分泌を担う組織

 

ミトタンは、副腎皮質の束状層と網状層を壊すことでコルチゾールの分泌量を正常な量にまで戻すために使います。
しかし、用量を間違えると低コルチゾー ル血症または完全な副腎皮質機能低下症になります。