イヌ科の動物だけにおこるウイルス性肝炎で、子犬が感染すると重症化しやすく、死にいたることがあります。
1歳以下の犬では致死率が高いが、成犬では不顕性感染を示すことが多い。
特に2ヶ月くらいまでの幼犬がかかると一晩で死んでしまうこともあります。
症状
症状はさまざまで、軽症から重症まで主に 4つに大別されます。
不顕性型
ほとんど症状はみられません。
軽症型
食欲不振、鼻水、39℃程度の微熱が出ます。
重症型
鼻水、高熱、下痢、おう吐、むくみ、腹痛などの症状が数日続きます。
回復期に、目の角膜が青白くにごることがあります。
突発性致死型
急激に高熱、腹痛、吐血、血便などがみられ
12~24時間以内に死亡します。
原因 アデノウイルス1型への感染
アデノウイルス1型に感染している犬の尿や便、ウイルスが付着している食器などをなめることで感染します。
ウイルスの足取り
1.ウイルスは侵入するとまず、扁桃腺に取り付いて増殖します。
2.次に首のリンパ節でさらに増殖をして、感染後約4日でウイルスが血流に侵入し全身へと移動してしまいます。
3.全身に広がっていったあと、特に眼、肝臓、腎臓が被害を受けます。
これによって症状が見られるようになりますが、飼い主が気づくのは感染後約1週間すぎたくらいです。
多頭飼いの場合は注意が必要
回復後も腎臓にはウイルスが長く残り、6~9か月間は尿中にウイルスが排出されることがあります。
しばらくは他の犬と接触させてはいけません。
人間には感染しませんが、ウイルスを運ぶことは可能です。
他の犬に接触しないようにしましょう。
治療 輸血が必要なことも
アデノウイルスに有効な抗生物質はありません。
犬の回復力次第となります。
私たちができることは、ウイルス感染によってダメージを受けた肝臓の細胞が再生されるまでの間、積極的な支持療法をおこないます。
そこで、輸液によって肝細胞の修復に必要なブドウ糖などを肝臓に送ったり栄養剤を与えます。
出血が多い場合は、輸血を行います。
また、細菌による肺炎や腎盂腎炎といった二次感染を防ぐため抗生剤の投与が行われることもあります。
食餌療法も重要です。
肝臓に負担をかけないように、栄養価の高い食事を与えて安静にさせ、炎症が収まるのを待ちます。
アデノウイルスの消毒法
病気の子の生活環境は、徹底的に消毒しましょう。
ですが、完全にウイルスをなくすことは不可能です。
紫外線照射のアデノウイルスに対する滅菌作用はきわめて低いと考えられます。
消毒剤への抵抗性が強く、塩素消毒が有効であるとされています。
塩素消毒しよう
次亜塩素酸ナトリウムは短時間(15 秒)で作用するのでウイルスの除去に最適です。
効果は 0.05% 以上で有効である。
気を付けること
- 金属腐食性があるので,金属の場合、防錆性金属や非金属製器具にしか使用できない。
ドアノブとかダメですね。
- 粘膜刺激性があるので皮膚などには使うものではない。
- 布を脱色する性質があるために用途が限られる。
漂白剤だから色物は注意ですね。
- アルカリ性なので酸性薬品と混合すると塩素ガスを発生するので,部屋の換気には注意を要する
消毒液は手作りできます。
塩素系漂白剤(ハイター、ブリーチなど)20ccと
水500ccを混ぜた消毒薬を作ります。
これをスプレー容器などに入れましょう。
床やケージなどをスプレーして拭いてください。
血液や涙液などが付着した床,器具などの清拭にも使用可能です。
ただし、有機物の汚れがあると消毒効果は極端に落ちます。
ウンチやエサなどは、あらかじめ掃除してこれらの汚れを取った後に消毒をしましょう。
また、塩素ガスや手荒れなどに十分注意して、マスクや手袋を使用しましょう。
布やタオルなどのリネン類
0.05〜0.1% 次亜塩素酸ナトリウムの使用や 90℃ 5 秒間の熱消毒がよい
手を洗う時
せっけんで手を洗って、物理的に落とした後に補助的にアルコールを使いましょう。
アルコール類では、ウイルスの型により、効果にばらつきがみられます。
エタノールは濃度が80%でも作用するためには10分間以上時間が必要です。
以下の濃度では 30分間以上の時間が必要となります。
エタノール消毒の際には、手洗い併用によって消毒効果を補うという使い方になります。
予防 ワクチンの接種を忘れない
衛生管理を心がけます。
また、アデノウイルス1型に対するワクチンは、5種以上の混合ワクチンに含まれています。
年に1度の予防接種を欠かさないようにします。
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