犬は人間と比べると呼吸器が比較的丈夫です。
そのため呼吸器の病気はあまり起こりませんが、比較的多いのは細菌やウイルスによる感染で炎症を起こすことです。
鼻水を出したり、頻繁に咳をするようなら、鼻やのど、気管支の炎症を疑ってみましょう。
気管の病気
気管は口から肺にかけて伸びている管状の器官です。
柔軟性があり、アルファベットのCのような形の軟骨が並んで保護しています。
吸い込んだ空気を通すための管で、肺の中で枝分かれしています。
枝状の部分は気管支と呼ばれています。
これらの部分で病気になって炎症が起こることで、空気の通りが悪くなり呼吸に影響がでるようになります。
気管支炎
ウイルスや細菌に感染することによって、気管支が炎症を起こしてひどい咳を繰り返したり、呼吸困難になる病気です。
症状が重くなると触られることを嫌がったり、少しの運動で咳がでるようになります。
慢性化してしまった場合、完治することがなく一生かかえていくことになるため注意が必要です。
気管支狭窄
気管または気管支が、周辺の組織の異常によって圧迫されて、空気の通り道が狭くなる病気です。
また、異物を誤って飲み込んでしまい、気管からさらにその先の気管支まで入り込んで症状が起こる場合もあります。
異物を取り除くことが困難な場合には、手術が行われることもあります。
気管虚脱
気管がつぶれてしまって扁平となり、呼吸困難になる病気です。
肥満や老齢、遺伝的な原因と考えられます。
気管はC型の軟骨が連なって守っていますが、この軟骨に異常が起こり正常な形を保てなくなることから呼吸に障害が起こります。
ホースの先をつぶすと水が遠く飛ぶように、空気の通り道が狭くなるわけです。
暑い季節に症状が出やすい傾向があり、小型犬やパグのような口が短いタイプの犬に多く起こりやすい病気です。
肥満とも密接な関係があり、脂肪が付きすぎると気管への負担となると考えられます。
気管虚脱の続き
肺の病気
肺は吸い込んだ空気から酸素を取り出し、血液中の二酸化炭素と交換する大切な器官です。
この部分で病気が起これば呼吸することが困難になるため、症状が悪化すれば死亡することになります。
呼吸の乱れやチアノーゼなど明らかに苦しそうな症状が見られるため、異常を発見したらすぐに対処するようにしましょう。
肺炎
人間でも症状の悪化から、最終的に肺炎で死亡するなど良く聞く病気です。
ウイルスや細菌による感染症、寄生虫などが原因となって肺と気管支に重い炎症が起こる病気です。
呼吸困難の症状が徐々に進行するため、最終的にはひどくなって死亡することも少なくありません。
肺炎の続き
肺気腫
肺の中で酸素と二酸化炭素を交換している「肺胞」という組織に異常が起こる病気です。
肺胞が何らかの原因で以上に広がり、空気を必要以上に含んで張り詰め、最終的には壊れてしまう病気です。
急性の場合には、急激な呼吸困難が起こり、泡やよだれを出して非常に苦しみます。
症状はゆっくりと進行し、最終的にはひどくなって死亡することもあります。
肺気腫の続き
肺水腫
肺の中に水がたまるため本来の働きができないため、呼吸困難を起こします。
気管支や肺胞などに水が溜まって、肺がむくんだ状態になります。
刺激性ガスや薬品中毒などが原因で症状を起こしたり、心臓疾患が原因となる場合もあります。
肺水腫の続き
胸の病気
肺は肋骨で囲まれた胸腔という中に入っており、完全に隔離された空間で気管だけが外に出ています。
イメージではペットボトルの中に風船が入っていて、ストローで膨らませているような感じです。
胸の病気ではこの肺を守っている空間、胸腔に穴が開いたり、破れたり炎症を起こしたりといったトラブルが起こることで、肺が膨らむスペースが狭くなってしまい苦しくなるという流れになります。
気胸
あばら骨と横隔膜に囲まれた胸腔という空間に肺は入っています。
胸腔は通常完全に密閉されているため、息を吸うと肺は大きく膨らむことができますが、気胸は外傷などによって胸腔に穴が開いて、空気が侵入してしまったため肺が膨らむスペースが狭くなってしまった状態です。
空気が邪魔で大きく膨らめないので呼吸困難を起こします。
事故などによって大きく穴が開いてしまった場合には、手術が必要な場合もあります。
気胸の続き
横隔膜ヘルニア
肺は自ら膨らんだり、縮んだりする機能はありません。
そのため、横隔膜という筋肉の膜が伸びたり、縮んだりして同時に肋骨が膨らんだりすることで呼吸しています。
ヘルニアとは身体の内部で、もともと穴や裂け目などない部分に穴が開いて、そこから臓器がでてしまう状態を言います。
事故などのケガによって横隔膜が、破れたり避けたりすることで内臓が胸腔の方にはみ出している病気が横隔膜ヘルニアです。
穴の大きさや飛び出し具合で、症状は大きく違います。
吐き気や食欲不振、呼吸困難などが見られる。
横隔膜ヘルニアの続き
胸膜炎
胸膜とは何か?
胸の構造ですが、肺は薄い膜で覆われています。
同じように胸の内部も薄い膜で覆われています。
薄い皮の間には水があり、運動しても肺が擦れたりしないようになっています。
肺は二重の袋に入っているイメージです。
胸膜炎はこの膜がウイルスや細菌、真菌などに感染し炎症を起こしてしまう病気です。
他にも外傷や腫瘍などでも炎症が起こる場合があります。
症状は呼吸がしにくくなり、散歩や運動を嫌がるようになります。
また、症状が重くなると呼吸困難が激しくなり、進行すると死亡することもあります。
胸膜炎の続き