猫ひっかき病は名前の通り、猫に咬まれたり、ひっかっかれるなどのキズを負った場合に、発症する病気でリンパ節が腫れたり、患部が化膿したりと異変を感じるようになります。
また、病原菌を持っていれば猫だけではなく、犬や猿、ノミなどからの感染もあり得ます。
猫ひっかき病の原因
猫ひっかき病への感染は名前の由来通り、ひっかかれたり、咬まれたりして傷口から細菌が侵入することで感染し症状があらわれます。
猫に引っかかれたりすることで起こるこの病気は、1992年に原因菌が
Bartonella henselae
バルトネラ・ヘンセレ
(グラム陰性の桿菌)
であることがわかりました。
感染ルート
咬まれたり、引っかかれたりすることが要因ですが、動物の歯や爪に初めから菌がいるわけではありません。
他の所から菌がやってきて、付着してその牙や爪に傷つけられることで私たちは感染します。
ノミの吸血
まずは、感染した猫の血をノミが吸うところから始まります。
ノミの体内で菌が増殖していきます。
ノミは吸血するために移動して、猫や犬などに飛び移ります。
そして、体の上でノミが汚染されたフンをします。
グルーミングの際に
犬や猫はノミが寄生してるとかゆみや違和感から掻いたり、グルーミングを丹念に行います。
そのため、歯や爪にノミのフンが付着することになります。
この状態で咬まれたり、ひっかかれたりすれば私たち人間は感染することになります。
猫からうつる
感染ネコの血を吸ったノミが、他の猫や犬などへと移ることで菌も広がります。
猫同士がケンカする必要もありません。
ノミは繁殖力が強く、短期間に爆発的に増えます。
その猫や犬に引っかかれたり、咬まれたりといった場合に人に感染します。
猫の感染状況
猫や犬は感染しても特に症状があらわれませんが、保菌している可能性があります。
日本では猫の9~15%が保菌していると思われます。
保菌している可能性が高い猫
- 喧嘩したり他の猫と接触の多いオス
- 野良猫
- 南の地方の猫
- 都市部の猫
- 1~3歳の若い猫
- ノミの寄生のあった猫
これらは感染する可能性が高いため、保菌している可能性も高くなっています。
飼育環境やノミの発生しやすさや地域に猫が多いかなど、条件が揃うと感染する確率は高くなります。
症状(人間)
感染してもすぐに症状は現れれず、潜伏期間が存在します。
猫に引っかかれるなどの傷を負ってから、3~10日ほどの潜伏期間を経て発症します。
傷をつけられた部分が虫刺されの様に赤く腫れたり、水ぶくれが見られ、場合によっては化膿したり潰瘍になったりします。
多くの場合下記のような症状も見られます。
- 長く続く37℃程度の発熱
- 全身倦怠
- 関節痛
- 嘔気
- 食欲不振
- 頭痛
このような初期症状が見られてから、1~2週間後のにリンパ節が腫れてくる。
リンパ節に起こる症状
多くの人がリンパ節に症状が起こり、腫れと痛みを伴います。
また、皮膚が赤くなったり、熱感をともないます。
この症状は、数週間から数か月と結構長く続くことになり、ともなって発熱やおう吐も継続して伴うことになります。
特に何もしなくても、自然に治ってしまうことも多いようです。
症状が起こる位置
- 鼠径部(足のつけ根)
- 腋窩(わき汗が出るあたり)
- 頸部リンパ節(頸動脈の周辺あたり)
顔に傷がなくても、首が腫れることもある。
稀なケース
5~10%程度の人や基礎疾患を持っている人、高齢者など免疫力が低下している場合には、まれに典型定期ではない症状や重症化する場合があります。
- パリノー症候群(耳周囲のリンパ節の炎症、眼球運動障害など)
- 肝臓や脾臓の多発性結節性病変
- 肺炎
- 脳炎
- 心内膜炎
- 肉芽腫性肝炎
- 急性脳症
- 骨溶解性の病変
このような症状が見られることがあります。
脳炎
猫ひっかき病が発症した場合、0.25%程度の人が脳炎を併発することがあります。
これは最も重篤な症状のひとつで、リンパ節が腫れて炎症を起こしてから1~3週間後くらいに発症し、突然の痙攣や意識障害などが見られます。
多くの場合は、後遺症は残らずに完治します。
心臓
心臓弁膜症の人が猫と接触していた場合に、心内膜炎が多く見られる傾向にあります。
免疫不全や高齢者
免疫不全症の人や高齢者のような免疫能力が低下している人は、重症化する場合があります。
そのため、マヒや脊髄損傷にいたるケースも存在します。
こんな人が感染しやすい
猫ひっかき病になる人にある程度傾向があります。
60%が女性、10代と40代に多い
飼育や猫の世話をしたり、猫と接触する機会が多いのがこの年代の女性のようです。
接触する機会が増えれば、ひっかかれたり、噛まれることも多くなります。
流行る季節
ネコノミは夏にたくさん増えて、猫も外にお出かけするため、感染しやすくなります。
そして、秋や冬になると室内で過ごすことが増えるようになります。
そのため、猫の引っかかれたりする機会が増えるため、秋から冬にかけて猫ひっかき病が多発します。
その他
特に生後6か月以内の仔ネコからの感染率が高い。
犬でも猫ひっかき病を保菌している可能性があります。
ノミがうつれば簡単に感染が広がってしまいます。
症状(猫)
猫ひっかき病の菌は、猫に対して病原性がなく、症状はほとんどありません。
ですが、菌を持った状態は1~2年ほど続くとされています。
治療(人間)
症状が軽くリンパ節が腫れているくらいの場合には、自然治癒で治っていきます。
しかし、完治するまで時間がかかり数週間、場合によっては数ヶ月もかかることがある。
大切なことは病院に行った際には、医師にきちんと伝えることです。
- 猫や犬に引っかかれた、噛まれた。
- その後からリンパが腫れたり、微熱が続いている
など。
リンパ節が大きく腫れたり、むずがゆい感覚がハッキリとしている場合には抗菌薬を使うこともあります。
予防
猫や犬は感染していても症状も現れないため、飼い主さんが感染しているか知ることは難しいでしょう。
そのため、予防が大切です。
- ペットの保菌状態はわからないのでひっかかれたり、かまれたりしないように注意する。
- 爪切りを行う。
- ノミの定期的な駆除薬を使う。
- 口移しで食べ物与えるなどの過度の接触を避けましょう。
- 免疫不全状態にある人は猫との接触自体を控えましょう。