細菌性感染症

カンピロバクター症

 

カンピロバクターというのはS字状、または螺旋状に湾曲した菌で、回転運動を行いすばやく動きます。
人では食中毒の原因となる代表的な菌である。

しかし、酸素濃度3~15%を好むため、酸素濃度約21%の空気中では死滅し易く、運動性が低下します。

 

動物の症状

犬や、ネコの場合は下痢(多くは5~15日間)、嘔吐の他、食欲不振、発熱などが挙げられます。
無症状の犬猫(いわゆるキャリアー)も多く、子犬や免疫力の低下、ストレス、あるいは他の疾患の存在により発症し易くなります。

 

人間の症状

ヒトが感染した場合、平均2~5日の潜伏期間を経て、下痢、腹痛、発熱等が見られます。
小児の場合は血便をすることもあります。

ごくまれにですが、カンピロバクター症に感染したことがきっかけとなって運動神経が障害され、手足が麻痺するギラン・バレー症候群を発症する人がいることが明らかとなっています。

 

原因

特にニワトリでは感染率が高いと報告があり、この菌によって汚染された鶏肉を、よく加熱しないで食べることによって引き起こされる食中毒菌として知られています。

また、この菌は仔イヌの下痢症の原因菌にもなります。
仔イヌの便からヒトに感染することがありますので、仔イヌの便を処理したあとは、よく手を洗うことが必要です。

犬や猫の1%前後が保菌していると考えられてます。

多頭飼いでは菌が見つかる可能性が高くなります。
その要因として

  • ストレスの増加
  • 頻繁な食事の変更
  • 犬猫同士で病原菌を移し合う

などの理由によりさらに高くなります。
ある文献によると、多頭飼育の犬では分離率87%、猫では75%となっています。

 

人間の原因

カンピロバクター症の感染ルートとしては、汚染された食品や水を口にすることによって発生する食中毒と、感染している動物と接触することによって発生する動物由来感染症に大別されます。

いずれも汚染された食品や手指等から、菌を経口摂取することにより感染します。

糞の始末の時に経口感染することが一番考えられます。
きちんと手を洗いましょう。
乾燥していると粉塵になっていることもありえます。

感染力は他の食中毒細菌と比較して強く、数百個の摂取で感染すると言われていますが、空気中では長期間生存できないため、伝染病のように人から人に感染することは滅多にありません。

 

家の犬猫がカンピロバクターを保菌あるいは下痢として排泄していれば家族にも感染します。
ただし、カンピロバクターにも何種類かあります。

 

カンピロバクター・アプサリエンシス
成犬、成猫で感染が最も多い菌種です。

犬猫で最も多く見られるアプサリエンシスが、人の腸管感染症の原因となることもあり、犬猫が人のアプサリエンシス感染源として重要なのではないか、と言われ始めています。
アプサリエンシスは犬猫には症状を示さないと言われています。

 

カンピロバクター・ジェジュニ
人間で感染が最も多い菌種で食中毒を起こす菌です。
人のジェジュニによる食中毒のうち、6%が子猫との接触によるものとの報告が有ります。

 

このように2つの菌は親戚のように近い種類ですが異なりますので、犬猫が感染源となっているケースは少ないようです。

しかし、ペットから菌をもらってしまう可能性は低いとは言え、ゼロではないので、子供が子犬、子猫を触る際には特に注意しましょう。

 

治療

カンピロバクター菌のワクチンは開発されていません。
しかし、状況にあわせて抗菌薬を用いることが効果的です。

マクロライド系(アジスロマイシンなど)を用います。
ニューキノロンは耐性菌が増加しているので使用しないようにします。
下痢や嘔吐を伴い脱水症状がみられる時は輸液などで体内の水分を補います。

 

犬猫のケース

犬猫の嘔吐・下痢症は最も一般的な疾患である一方で、子犬や子猫では脱水や低血糖を起こしやすく、致死的となる場合も少なく有りません。そのため、特に早めの来院を心がけて下さい。

脱水症状などを起こしている場合は輸液の投与、栄養補給や保温を行い体力を温存させます。

成犬・成猫であっても経過が長引いたり、ケチャップ状の血便や血液混じりの嘔吐を呈するようになります。
さらに重篤化すれば、炎症性腸炎や膵炎を併発することも稀ではない為、甘く見すぎないようにしましょう。

 

人間のケース

自然治癒することが多く、軽症の場合は補液や整腸剤等の対症療法が中心となります。
必要に応じて抗生物質が投与されます。

脱水症状などを起こしている場合は輸液の投与、栄養補給や保温を行い体力を温存させます。
基礎疾患の影響や、混合感染などを引き起こしている場合は、それに合わせて治療を行います。

 

 

予防

 

糞便検査
猫のウンチの中の細菌が人への感染源になることがあるため、特に小さいお子さんのいる家庭で子犬・子猫を飼い始める場合には、動物病院での早急な糞便検査が必要です。
保菌しているか調べるのも良い予防法です。

手洗い
基本的なことですが動物と接触した後は、石鹸で手洗いを十分に行いましょう。
予防効果は高いです。

細菌との接触を防ごう
感染動物との接触を防ぐために室内飼育にしたり、新鮮な食餌を与えてあげましょう。
しかし、生肉は与えないようにしましょう。
清潔な飼育環境を整えることも重要な予防策です。

 

加熱と二次感染予防
食中毒の原因食品としては肉類が多く、特に牛の生レバーや鶏肉は、カンピロバクター菌に高い確率で汚染されているがことが報告されています。
通常の加熱調理でカンピロバクターは死滅するので、食肉は加熱が不十分にならないようにしましょう。
また、生肉に触れた手や調理器具による二次汚染にも注意しましょう。

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