犬の膀胱炎は泌尿器系の病気の中でもかかりやすく、なかなか治らず、再発を繰り返すことの多い病気です。
膀胱とは尿をためておく袋状の臓器のことを言います。
膀胱は腎臓から尿管を通して送られてくる尿を一時的に貯めておき、尿道から体の外に尿を排出します。
膀胱炎は膀胱が細菌に感染して、炎症がおこり、尿に異常が出ます。
慢性化して「腎盂腎炎」や「尿路結石」併発する恐れもあります。
膀胱炎の症状
- 元気がない
- 食欲不振
- おしっこの量は少ないのに回数が多い
- 尿に膿が混じって尿の色がにごる
- 悪化すると血尿が出たり、ニオイがきつくなる
膀胱炎は尿がたまると痛みがあるので、背中を丸めて鳴き声をあげる場合もあります。
原因
原因はたくさんがありますが、結果的には細菌が侵入することで炎症が起こります。
犬の膀胱炎の原因としては細菌感染が最も多いです。
排泄時にブドウ球菌が尿道から尿管を通り膀胱に侵入することで炎症を起こします。
犬の原因は圧倒的に膣や陰茎からの感染が多いようです。
膀胱炎は症状が進行すると尿閉塞になります。
尿閉塞になると
尿をうまく排出できなくなり、ポタポタ垂らしてしまいます。
完全に閉塞してしまうと尿が全く出せなくなるので命にかかわってきます。
この場合はすぐに病院に連れていきましょう。
メスのほうが感染しやすい
理由としては、メスのほうが尿道が太く短く、細菌が早く膀胱にたどり着くことができます。
排泄時の姿勢もメスは地面に接触する回数が多く、細菌が侵入しやすいためです。
そのためオスよりも発症しやすくなっています。
結石や結晶
膀胱にできた結石が膀胱の粘膜を傷つけて炎症がおこり、それによって膀胱炎になることがあります。
猫では膀胱内に結石ができることで粘膜に傷がついて起こることが多い傾向にあります。
ストルバイト尿石
犬猫の尿石の60%はこのストルバイト尿石です。
病気やストレス、加齢などで免疫力が落ちてくる、水を飲む量が少ない、おしっこを我慢しがちな犬などは膀胱で尿の滞在時間が長くなったり、膀胱や尿道に細菌が増えやすくなります。
膀胱や尿道に細菌感染が起こってくると尿素分解菌というものが増えてきます。
この菌は尿素をアンモニアと炭酸ガスに分解してしまいます。
するとアンモニアによって本来酸性の尿アルカリ性に変化してしまいます。
尿がアルカリ性になると・・・
酸性の尿では溶けていたリン・アンモニウム・マグネシウムが結晶化してきます。
これらが大きくなってリン酸アンモニウムマグネシウム結石ができます。
これをストルバイト結石といいます。
冬場など寒い時期に水を飲まなくなり、おしっこの量や回数が減るとおしっこが濃縮してしまいミネラルの成分が結石を作ることもあります。
外傷
膀胱腫瘍によって膀胱が傷つき膀胱炎にかかることもあります。
おなかを強く蹴られたり、ぶつけてしまったときなどに直接膀胱が気づくことがあります。
また、交通事故などの外傷により膀胱が傷つき炎症を起こしてしまうことも原因の1つです。
腫瘍
あまり多くありませんが、高齢になると膀胱に腫瘍ができることがあります。
多くの場合は悪性です。いわゆるガンです。
ストレス
ストレスが原因で膀胱炎になることもあります。
ストレスがかかるとストレスホルモンが分泌されます。
ストレスのダメージを軽減するために分泌されるものですが、これにはステロイドのような効果があるので免疫力が低下してしまいます。
また、去勢手術をしたりペットホテルに預けられるなどもストレスになります。
糖尿病
糖尿病はさまざまな合併症を引き起こすため、犬も猫も大きな問題です。
糖尿病の尿は糖分が含まれているため、細菌が繁殖しやすい状態になっています。
加齢
仕方のないことですが加齢とともに免疫力が落ちるため細菌感染しやすくなります。
老犬や老猫に発症しやすい傾向があります。
おしっこの回数が少ない
おしっこをすると菌も一緒に洗い流す効果があります。
我慢してしまうと尿の滞在時間が長くなって、細菌の繁殖につながります。
また飲み水の量が少ないと尿の量が減るので回数も減ってしまいます。
膀胱炎の治療
膀胱炎の治療にもいくつか方法があり、原因に合わせたものが大切です。
水分を取らせる
水をたくさん飲ませて尿を促して、膀胱内の細菌を排出させてあげることも有効な治療法の1つです。
原因から治療する
尿結石では食事や薬で結石を溶かす治療、糖尿病の場合は血糖値のコントロールも合わせて治療します。
また、腫瘍では外科手術や抗がん剤、放射線治療が必要なこともあります。
抗生物質を投与する
細菌感染に効果的な抗生物質や抗菌薬を飲ませます。
2~3週間、細菌がいなくなるまで服用を続けます。
これで大抵の場合症状が改善されます。
アモキシシリン
グラム陽性菌、陰性菌にかかわらず、高い抗菌力を示すスペクトルの広いペニシリン系の抗生物質です。
「アモキシシリン」は殺菌性抗菌薬であり、原因菌を死滅させることができるため、発見の遅れた感染症や、急性感染症にも優れた効果を発揮すると考えられています。
さらに投与後、速やかに各組織に移行し、多くが体内で蓄積されることなく、腎排泄されますので、急性感染症の治療に適しています。
リクセン
セフェム系抗生物質のセファレキシンを有効成分とする薬です。
有効成分のセファレキシンは、ブドウ球菌による感染症に効果があります。
ペニシリン・ショックなどのショック症状をおこすことが少ないため、現在では抗生物質の生産量の多くがこのセフェム系で占められています。
尿中にも薬が排泄されるため、膀胱炎などに対しても有効です。
体重40キロの犬で1錠です。
体重に応じてカットして使いましょう。
注意ポイント
抗生剤を服用していても細菌が減らない場合には、抗生剤の種類があっていない可能性があります。
抗生剤の種類を変えたり細菌の特定をする検査を受けたりしてください。
膀胱炎は非常に再発しやすく、何度も繰り返していると、細菌が腎臓に達して腎盂腎炎や腎炎になることがあるので注意が必要です。
予防
膀胱炎については人間がなったときとそれほど変わらず、水分をたくさんとって尿の量を増やします。
万が一膀胱内に細菌が入ってしまった場合でも、水分摂取で排泄を促すことにより、膀胱内における細菌の繁殖を抑えられます。
清潔さを保つ
細菌の感染を防ぐために尿道口を清潔に保つことも重要です。
トイレをキレイに保ったり、排泄後におしりを拭くなども効果があります。
食事管理
水分量が多く、尿酸値のバランスやミネラル量にも配慮した食事をあげるようにしましょう。
また、膀胱炎は再発の可能性が高いので、食事療法が生涯つづくこともあります。