ウイルス性感染症

仔犬は要注意!イヌヘルペス感染症の症状と予防策

イヌヘルペスウイルスはイヌ科の動物に感染するウイルスで、オオカミやコヨーテ、犬など世界中で確認されているありふれたウイルスです。

このウイルスに感染することによりさまざまな症状があらわれます。

特に生まれたばかりの仔犬は重篤な症状が起こり、死亡率も非常に高いです。

 

原因

イヌヘルペスウイルスに感染することによっておこります。

症状が見られるのは出生直後から2~3週間までの新生の子犬だけです。

成犬の場合感染してもほとんど無害です。

 

感染ルート

新生仔犬へのウイルスの感染経路はかわっていませんが、母犬の胎内にいるときに胎盤から感染するか、または生まれるときに産道で感染するとみられています。

体温調整機能や免疫力が不十分な新生の子犬の体温と、35~37度で盛んに増えるウイルスの性質が合致してしまうようです。

 

子犬と成犬の場合

イヌヘルペスウイルスに感染している犬から感染することになります。

  • 分泌物への接触
  • よだれなどの飛沫
  • 感染犬との交尾

これらが原因ですが正常な免疫力があれば、仔犬のように臓器に重篤なダメージを負うことはなく、ほぼ無症状ですが感染はします。

 

症状

生まれたばかりの子犬に急性の致死性症状が起こる感染症です。

腎臓、肺、肝臓など主な臓器の出血と壊死を起こす。

 

発病期間

感染してから潜伏期間は約1週間ほど、発病してから死亡するまでは4~7日程度です。

 

step
1
生後1~2週間目

黄緑色~緑色の下痢をするようになり、やがて母犬の乳を飲まなくなります。
ときに吐き気、おう吐、よだれが見られ、息苦しそうな呼吸、肺炎の症状が見られます。

 

step
2
末期

みずっぽい下痢をして乳を全く飲まず、運動失調などの神経症状があらわれます。

4~7日のうちにほとんどの兄弟姉妹犬が死亡してしまいます。

 

特徴的な症状として

病気が進むにつれてウイルスによって臓器が侵食されて壊死していきます。

そのため、おなかを押さえると痛がります。

乳を飲まなくなってから現われる特徴が鳴き声で、死亡するまで続きます。

 

子犬・成犬の場合

生まれたばかりの仔犬だけではなく、成犬でも感染してしまいます。

風邪のような呼吸器症状が見られ、まれに肺炎を起こし重症になります。

ほとんどの場合、正常な免疫力があれば軽症のまま治ってしまいます。

 

 

生涯にわたる潜伏感染

ヘルペスウイルスの特徴として一度感染してしまうと完全になくすことができないことです。

感染した後、体内ではヘルペスウイルスに対して免疫がつくられます。

このウイルスは下記のような神経組織の中に逃げ込み休眠状態(潜伏)に入ります。

  • 三叉神経(こめかみから頬にかけて走る神経)
  • 腰仙髄神経節(腰の辺りにある、下半身に関係する神経)

犬の体力や免疫力が弱ったときに度々登場し増殖することで症状を起こします

イヌヘルペスウイルスの感染は生涯にわたって続きます。

 

 

治療

イヌヘルペスウイルスについては、増え方、発病、潜伏など不明な点が多く、未だワクチンは開発されていません。

輸血や抗生物質の投与などを試みますが、出産直後に高い死亡率を示すため、実際は治療が不可能と考えられます。

 

病院での診断の方法

動物病院では、イヌヘルペスウイルスの特徴的な症状から判断されます。

  • 新生の仔犬のおなかを押さえると痛がる
  • 持続性の鳴き声
  • 運動失調がみられる

しかし、イヌヘルペスに感染すると非常に死亡率が高く、急死するため、原因の確認が病理解剖後になってしまうことになります。

 

わずかな可能性に賭ける

一緒にうまれた兄弟の中で1頭だけ発症した場合などには、他の兄弟も感染しているとみなし治療を開始します。

発病した仔犬を隔離し、それぞれを少し高めの温度に設定した保育器に入れます。

ヘルペスウイルスの活動温度は35~37℃であるため

仔犬の体温を「38.6℃~39.4℃に保つ」、これにより犬ヘルペスウイルスの増殖が抑えられたという報告があるため保育器の温度を設定して救える可能性を見出します。

 

予防策

発症した子犬の死亡率はほぼ100%となっているので、感染させないようにすることがもっとも重要です。

ウイルスは一度感染すると生涯犬の体内に潜伏し、根治することはできません。

そのため、症状が出るたびに対処することとなります。

 

精神的・肉体的ストレスにより体力や抵抗力が落ちているときに再発することが多いです。

栄養バランスのよい給餌や、落ち着いて休める静かな環境、気温に対する対策など日ごろから健康に気を付けるようにしましょう。

 

妊娠とヘルペスウイルス

妊娠中にメス犬が犬ヘルペスに感染してしまうと胎児への影響があります。

  • 流産
  • 早産
  • 死産

このようなリスクが考えられます。

イヌヘルペスに感染してしまった場合、生涯ウイルスが潜伏しています。

そのため産後にも影響があります。

生まれたての仔犬の感染の原因は母犬であることが多いです。

仔犬の場合、産まれてきても産道などで感染することで高確率で死亡してしまいます。

 

これらのメス犬には出産させないようにすることも考えましょう

  • 新生仔犬がイヌヘルペスで急死した
  • 妊娠中の仔犬が死亡した
  • ミイラ変性による死亡
  • 流産の経験

事前にイヌヘルペスへの感染の有無を検査しておくと良いでしょう。

 

イヌヘルペスが発症した場合

感染を広げないために犬舎や産室などを消毒する必要があります。

  • 母犬が出産した場所
  • 母犬のいつもいた場所
  • 感染した仔犬がいた場所

これらは30倍に薄めた塩素系洗剤(次亜塩素酸ナトリウム)などを散布して消毒します。
またヘルペスウイルスは熱に弱いので、煮沸消毒も有効です。

 

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