圧倒的に子犬に多い感染症で血便、おう吐などの症状が始まってから数日で命にかかわる恐ろしい病気です。
パルボウイルスは、細胞分裂が盛んな部位に感染しやすい性質があります。
それらの細胞で爆発的に複製され、細胞を破壊してしまいます。
そのため感染すると腸、骨髄、リンパなどでどんどん増殖します。
ほとんどは腸か心筋に感染します。
主に心臓に症状があらわれる「心筋炎型」と消化に症状があらわれる「腸炎型」の2種類があります。
心筋炎型
心筋細胞にウイルスが侵入して増殖、破壊します。
破壊されれば心筋炎を起こし心不全により突然死することになります。
症状としては、悲鳴を上げたり、吐き気や不整脈が起こることもありますが、元気だったペットが急に状態が悪くなって、呼吸困難を起こし30分以内に急死してしまうことが多いようです。
そのため、飼い主が気が付いてもどうしようと思っている間に対処のしようがない状態になってしまう。
腸炎型
多くみられるのは腸炎型です。
1.侵入
ウイルスは口から入り、喉の組織で増殖して血管に侵入します。
2.腸に移動
腸に移動して細胞を攻撃します。
これにより正常な腸粘膜形成ができず、下痢、特徴的な水様性粘血便(トマトジュースみたい)がでるようになります。
腸の粘膜が破壊された場合
腸内は出血して、腸壁は炎症を起こすため、これを新しく再生するのに約5日かかります。
そのため、腸内が非常に弱って、消化ができなくなり、細菌は腸壁を超えて、他の部位にも広がることがあります。
この5日間を生き残れるかが勝負になります。
3.リンパ節や骨髄も破壊します。
骨髄細胞の破壊によって白血球数の激減によって、体の抵抗力が下がり腸内細菌のバランスも崩れます。
リンパ節や骨髄からの菌の侵入によって全身にまわることで敗血症をおこします。
敗血症
細菌などの感染で多臓器不全などになる病気。
非常に死亡率が高い。
約5日間に起こる症状
生き残れるかはこの5日間にかかっています。
おう吐
最初に起こる症状はおう吐です。
ウイルスは腸を攻撃するためです。
胃の中がからっぽになっても黄色の胆汁を吐きます。
(胆汁は肝臓で作られる消化液です。)
下痢
おう吐から始まり、その数時間後から下痢を繰り返します。
便は、最初は白っぽかったり黄色や緑の粘液を含みますが、やがてドロドロとした粘液状になります。
重症になると、血液が混ざったりひどい悪臭がします。
脱水症状
繰り返す下痢やおう吐のために体内からカリウムなどの電解質が失われます。
そうすると急速に脱水症状にいたります。
脱水は死に直結する原因の一つです。
下痢とおう吐から48~72時間ほどで死亡することがあります。
水分には注意が必要です。
カリウムの役割
カリウムは心臓機能、筋肉機能を調整する役割があるので体内のカリウムが低下すると、心停止したり、腸がマヒしてその機能が著しく低下します。
電解質などの補給が重要です。
妊娠中だと胎児は致命的
ペットが妊娠中に感染してしまった場合、胎盤を経由して胎児も感染してしまいます。
その結果、死産や流産になります。
こういった場合、母親は症状が軽微なためにパルボウィルス感染によるものと気づかれないことがあります。
パルボウイルスの感染源
ロからウイルスが入り込む
パルボウイルスに感染した犬の便やおう吐物など及びそれらの飛沫、粉塵を犬の鼻や口が触れることによって完成んが成立します。
不特定多数の犬や猫が集まる公園やペットショップ、動物病院などに感染力のあるウィルスが存在した場合、人や他の動物によって運ばれることがあります。
服や靴、被毛などに付着している可能性があります。
そのため室内で飼っている場合でもペットでも感染することはありえます。
他の種俗には感染しない
このウイルスはそれぞれの生き物に特化したウイルスです。
イヌパルボウイルスもネコパルボウイルスも人には感染しません。
ただし、猫はイヌパルボウイルスに感染する可能性があります。
ネコパルボから突然変異したものがイヌパルボだからです。
とにかくしぶとい
パルボウイルスはかなりしつこく糞や尿などで外に排出されると最低でも3カ月は生きています。
しかも消毒薬、紫外線が効かない、熱湯をかけてもダメ。
まわりの環境に拡散してしまうと対処しようがありません。
治療:とにかく体力を温存させる
パルボウイルスの特効薬はありません。
一度発症したら直接治療する方法はありませんが、体力や抵抗力があるうちなら対処療法を適切に行えば乗り越えることができるでしょう。
ほかの犬への感染を防ぐために隔離入院がベストです。
水分補給
まず感染した際にもっとも重要なのは脱水症状への対処です。
下痢とおう吐によって体内の水分や電解質は少なくなっています。
しかし、おう吐が激しいため、治療中は絶食し、水分補給、投薬はすべて点満です。
また、場合によっては輸血が必要になります。
二次感染の予防と炎症を抑える
抗生物質
ほかの細菌による二次感染を防ぐために使用する。
腸の炎症を抑える
ステロイドまたは非ステロイド性抗炎症薬などを使用して腸の炎症を抑えます。
整腸剤で腸の状態を改善させるなども効果的です。
勝負は発症から約5日間
発症後、5~7日程度で免疫が獲得できるので自然回復します。
もちこたえられれば、その後はだいたい1週間で回復します。
そして便からウイルスが検出されなければ退院できます。
しかし、生後2~3カ月程度までの若齢犬では免疫力の低下が二次感染を引き起こし死亡することが多いようです。
- ストレスの多い環境
- 消化管内寄生虫
- 犬コロナウイルス
これらに同時感染などの要因が重なると大幅に免疫力が低下します。
消毒しよう
愛犬が入院している間に、パルボウィルスに汚染されているものを消毒しましょう。
通常使われるアルコールやクレゾールは、パルボウイルスには効果がありません。
薬局で市販されている次亜塩素酸ナトリウム溶液を30倍に薄め、犬舎、寝床、食器のほか、犬が触れた可能性のあるものすべてを消毒してください。
食器などは1時間ほどつけ置きして洗ってしまいましょう。
パルボウイルスは強力なので拭くために使った雑巾は破棄しましょう。
予防 ワクチンの接種を徹底する
パルボウイルスは予防接種が最善の選択です。
生後8~9週後に予防接種を受けましょう。
免疫がないと思われる子犬では、ワクチンを接種する時期や回数が異なります。
その年の感染症の流行状況なども含め、獣医師に相談してください。