鼻腔と副鼻腔は、外の空気を体内に取り込むときの最初のフィルターの役割をします。
外の空気中の微粒子や病原体が気道を通って体内に侵入することを防いでいます。
体内に入る気体を加湿、加温する役目もあります。
さらにこの二つは嗅覚としても機能しているので、とても重要な器官といえるでしょう。
症状
症状が軽いときには、はっきりした症状がでないで、小量の鼻汁やくしゃみが出る程度ですんでしまうこともあります。
しかし、症状が重くなり慢性化すると、ねばりのある鼻汁がひっきりなしに出たり、くしゃみやゼーゼーという呼吸音が聞こえたり、また呼吸困難のため口をあけて呼吸をしたりするようになります。
鼻炎の重症化、慢性化したものが副鼻腔炎といえるでしょう。
鼻水
鼻水はさらさらした水様性のもの(鼻水)や、血液がまじって膿のようになった濃いものなどさまざまです。
鼻と目はつながっているので、鼻に異常が発生すると目にも影響がでることがあります。
鼻詰まりの影響から鼻涙管を詰まらせることがあり、目ヤニや涙がでやすくなり、結膜炎を引き起こす原因となります。
また、鼻が詰まっているので、においを感じづらくなり食欲が落ちる可能性、眠りが浅くなってしまうことも考えられます。
これにより体の免疫力が落ち、他の病気にもかかりやすくなってしまいます。
慢性副鼻腔炎 = 蓄膿症
蓄膿症は私たち人間でもよく見られる症状ですが
副鼻腔の入口が炎症のために狭くなったり閉じたりすると、副鼻腔の中が化膿して、蓄膿症の状態になることもあります。
副鼻腔炎は悪化すると膿がたまり蓄膿症になるである。
鼻が膨らむ

膿が鼻に溜まると鼻が膨らんだり固く膨らむこともあります。
鼻の上が腫れてきて、さわるとやわらかくふくらんでいたり、硬くもり上がっていたりすることがあります。
患部は熱を持っていて痛みを伴うことがあります。
そのため鼻に痛みや、結膜炎を起こしていたりすると、目ヤニが出たり、顔を頻繁にこする動作をすることがあります。
また、痛みから触れるのを嫌がることもあります。
患部に痛みがあったり、結膜炎や鼻炎を併発して目やにや涙を流したり、その痛みがあるために顔面をこすって気にしたりするしぐさが見られることもあります。
原因
鼻腔の隣にある副鼻腔が、炎症をおこしている状態が副鼻腔炎です。
鼻炎を放っておくと炎症が鼻の奥の副鼻腔にまで広がり、ひどいときには蓄膿症になります。
副鼻腔炎の始まりは鼻炎からです。
副鼻腔は、鼻腔の奥にづづく空洞で、内側は粘膜におおわれています。
そのため、鼻炎が奥の方にまで広がると、副鼻腔が炎症を起こして副鼻腔炎になります。
1.鼻からの侵入

鼻から空気を吸い込む際に、これらが入り込んで感染することにより炎症を引き起こします。
ウイルスや細菌
- 細菌性化膿性鼻炎
- 犬ジステンパーウイルス
- 猫のヘルペス
- カリシウイルス
真菌性
真菌はカビなどのような菌糸で増える生き物です。
アスペルギルス
呼吸器から全身に感染が起きますが鼻腔や副鼻腔への感染が多く見られます。
この菌は土壌に存在するので、どこででも感染が起こる可能性があります。
クリプトコッカス
感染すると呼吸器症状、皮下結節、リンパ節症、口腔内の炎症、発熱、中枢神経症状を起こす病気です。
くしゃみ、鼻水、鼻の変形などがみられるでしょう。
これらによって真菌性鼻炎が起こっている可能性があります。
2.歯周病

歯垢や歯石がたまると、そこに細菌が繁殖して歯周病になります。
歯周病は悪化するにつれて骨まで進行していきます。
そのため、上あごの薄い骨まで侵食されるてしまいます。
副鼻腔は上あごと顔面の骨の中にある空洞ですから、上あごの歯に異常がでるとそこから副鼻腔に向かって炎症が起きることがあります。
これが原因で副鼻腔が炎症をおこします。
3.その他
植物の葉、茎などとがったものが鼻腔やその周辺を傷つけたことで、鼻炎をおこしてしまうこともあります。
これらによって起きる鼻炎が考えられます。
また、腫瘍ができていてそれが原因の場合もあります。
治療
診断には鼻汁の培養や頭部のX線検査、さらに全身の検査が必要となることがあります。
ネブライザー
ネブライザーは薬剤を霧状にして、鼻や口から吸わせることで粘膜に直接薬剤がくっつくため、炎症を抑えることができます。
症状が重く、呼吸に支障が出るようなら鼻腔に対してネブライザー(吸入器)による直接的な治療などを併用します。
歯周病
歯や歯肉炎が原因なら、抜歯をしたり洗浄したりしてその治療を行います。
このような治療ではあまり効果がない場合
外科的な処置をほどこし、濃や炎症によって患部にたまったものを直接、 洗い流します。
チューブなどを挿入して何度か洗浄しなければならないこともあります。
鼻炎
ウイルスや細菌、真菌などの侵入などによる鼻炎などが原因の場合は、抗生物質や抗真菌薬の投与を行います。
ペニシリン系 抗生物質
アモキシシリン
アモキシシリンは細菌の外側の壁(細胞壁)の合成を阻害して細菌を殺すことで、細菌の増殖を抑えます。
グラム陽性菌、陰性菌にかかわらず高い抗菌力をもち、広い抗菌スペクトルを持っているのが特徴。
そのため、多くの感染性疾患に対し第一選択薬として用いられています。
犬・猫においては細菌性皮膚感染症の治療に使用します。
特徴
殺菌的に効く
「アモキシシリン」は殺菌性抗菌薬であるため、原因菌を死滅させることができます。
そのため発見の遅れた感染症や、急性感染症にも優れた効果を発揮すると考えられています。
素早く効き、排泄される
「アモキシシリン」は投与後、速やかに各組織に移行するので急性感染症の治療に適しています。
成分の多くが体内で蓄積されることなく、腎排泄されます。
使いやすい
「アモキシシリン」は使用制限の少ない薬剤です。
年齢制限や併用注意の薬剤も少なく、一般的に妊娠動物にも使用できます。
適応症
多くの感染症の治療に有効であるといわれています。
耳 | 中耳炎 |
のど | 扁桃腺 |
鼻 | 副鼻腔炎 |
肺 | 肺炎 |
腸 | 細菌性腸炎 |
肛門 | 肛門腺炎 |
泌尿器 | 尿道炎
膀胱炎 腎盂腎炎 |
生殖器 | 子宮内膜炎
子宮蓄膿症 |
その他 | 乳腺炎 |
トキソモックス(Toxo-mox)
内容量 | 1箱 10錠 |
1錠あたり | アモキシシリン:250mg クラブラン酸 :125mg |
オーグメンチン・クラバモックスのジェネリック製品になります。
- ペニシリン系抗生物質のアモキシシリン
- βラクタマーゼ阻害剤のクラブラン酸カリウム
2つを含有する複合抗生物質製剤です。
クラブラン酸カリウムが、細菌の生産するβラクタマーゼ(ペニシリナーゼ)によるアモキシシリンの分解を防ぐため、より安定した抗菌力を発揮することから、ペニシリナーゼを作り出すバクテリアを含むアモキシシリン感受性バクテリアが原因の感染治療に多く用いられます。
犬や猫の皮膚病、腸炎、呼吸器の感染、口腔感染(歯肉炎)などに効果があります。
ウィルスやダニなどの寄生虫感染には効果はありません。
トキソモックス(Toxo-mox)250mgノバモックス(Novamox)
ノバモックスは、細菌による感染症などに有効なペニシリン系抗生物質のシロップ剤です。
人間では「サワシリン」や「パセトシン」と同じ薬です。
甘いパイナップルのようなニオイがついているそうです。
犬は好むようですが、このにおいは猫には人気が薄いようですw
シロップタイプなので液体の量を簡単に調節できます。
また、錠剤をなかなか飲んでくれない子でも、うえを向かせてスポイトなどで口に入れてあげることで、投与も簡単にできます。
使用方法
1日に2-3回ご使用ください。
【用量】体重1kgにつきアモキシシリン10mg~25mg程度
内容量 | 1本 30ml |
成分 |
アモキシシリン 250mg 液体で5mlあたりアモキシシリン250mg入っているということです。 |
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マクロライド系 抗生物質
アジスロマイシン
アジスロマイシンが有効なのは おもに“細菌”による感染症です。
細菌のたんぱく質の合成を阻害し増殖できなくします。
それにより細菌による炎症、化膿、感染症に有効です。
本来は人間用医薬品ですが、動物医薬品として使用される場合があります。
アレルギーを起こしにくい
アレルギーを起こすことが少ないため、ペニシリン系やセフェム系抗生物質にアレルギーをおこすことは少ないです。
また、他のマクロライド系抗生物質でしばしば問題となる薬の飲み合わせについても心配が少ないほうです。
こいつらにも効く
一番の特徴は、一般的な抗生物質(βラクタム系)が効かないマイコプラズマやクラミジアに有効なことです。
適応症
皮膚 | 深在性皮膚感染症 |
のど | 咽頭・喉頭炎
扁桃炎(扁桃周囲炎、扁桃周囲膿瘍を含む) |
くちまわり | 歯周組織炎
歯冠周囲炎 顎炎 歯肉口内炎 |
耳 | 滲出性中耳炎 |
鼻 | 副鼻腔炎 |
呼吸器 | 急性気管支炎
肺炎 肺膿瘍 慢性呼吸器病変の二次感染 |
泌尿器 | 尿道炎 |
生殖器 | 子宮頸管炎 |
感染症 | バベシア症 |
ジスロマック ジェネリック
使用方法
犬の場合 | 猫の場合 |
体重1kg当たり5~10mg | 体重1kg当たり5~15mg |
1日1回 7日間まで経口投与 | 12~24時間毎に7日間まで経口投与 |
250mgと500mgの2種類がありますが値段は同じです。
アジー
アジー(Azee)は主成分アジスロマイシンを含有するマクロライド系抗生物質です。
ファイザー社のジスロマック錠のジェネリック医薬品です。
価格からみるとアジーのほうがダントツに安いようです。
使用方法
犬の場合 | 猫の場合 |
体重1kg当たり5~10mg | 体重1kg当たり5~15mg |
1日1回 7日間まで経口投与 | 12~24時間毎に7日間まで経口投与 |
リンコマイシン系 抗生物質 クリンダマイシン
細菌の蛋白質の合成を阻害する効果があります。
細菌が活性化するために必要なタンパク質の増加や合成を停止させ、また既存の細菌を死滅させることによって細菌の繁殖を停止させます。
特徴
類似薬のリンコマイシンよりも強力です。
グラム陽性菌、嫌気性菌によく効く
グラム陽性菌によく効きます。そのためドウ球菌や溶連菌などに有効です。
また、嫌気性菌にも強い抗菌力をもつのも特徴です。
嫌気性菌とは生存に空気(酸素)を必要としないタイプの細菌です。
特に皮膚表面、粘膜面、口腔、腸管などに存在し、内因性や自己感染を引き起こす原因とななります。
口腔内はレンサ球菌と嫌気性菌が多いため原因菌をカバーできる可能性が高いでしょう。
嫌気性菌による感染症は、組織の壊死、悪臭、膿瘍形成などを伴うことが多く、ほとんどが慢性的で難治性です。
原虫にも効果がある
細菌以外のマラリア原虫にも一定の効果があり、抗マラリア薬のキニーネと併用されることがあります。
ペニシリン系が使えないときに
クリンダマイシンはレンサ球菌属、肺炎球菌及びブドウ球菌属による重症感染症、ペニシリンにアレルギーのある場合、又は医師がペニシリンの使用が不適切と判断した場合のための治療手段として残しておくようにする。
そのため、第二、第三選択薬とすることが適切です。
むやみに使用することは耐性菌を生み出してしまうからです。
エリスロマイシンと併用できない
抗生物質のエリスロマイシンと併用すると、この薬の効力が発揮されません。
適応症
皮膚 | 表在性皮膚感染症
深在性皮膚感染症 慢性膿皮症 |
のど | 咽頭・喉頭炎
扁桃炎 |
気管支、肺 | 急性気管支炎
肺炎、誤嚥性肺炎 慢性呼吸器病変の二次感染 |
目 | 涙嚢炎
麦粒腫 |
耳 | 外耳炎
中耳炎 |
鼻 | 副鼻腔炎 |
あご | 顎骨周辺の蜂巣炎
顎炎 |
感染症 | 猩紅熱
骨及び関節の感染症 嫌気性菌による腹膜炎、腹腔内膿瘍 |
バイオクラン(Bioclan)
主成分クリンダマイシンが1mlあたり25mgを含有するリンコマイシン系抗生物質です。
ファイザー製薬のアンチローブ錠と同一主成分となりますが、バイオクランは経口液剤です。
人間の味覚ですが苦味が強く感じるようです。
使用方法
犬の場合 | |
使用量 | 体重1kg 当たり
2.5mg |
使用頻度 | 12時間毎に経口投与 |
猫の場合 | |
使用量 | 体重2.27kg 当たり
1~2ml |
使用頻度 | 24時間毎に経口投与 |