寄生虫症

回虫症(トキソカラ症)

回虫症は長さ15cmほどの寄生虫が消化管内に住み着いてしまう病気です。

回虫は小腸の栄養をこっそりいただいて生活していますが、数が増えてくるとさまざまな異常が見られるようになってきます。

特に子犬の感染率が高く、注意が必要な感染症です。

 

回虫とは?

分類学上では線虫類にあたり、人には人回虫が犬には犬回虫があり動物それぞれに適応した回虫が存在しています。
体長は人の回虫で30cm位、犬で15cm位。

また、回虫は産卵数の非常に多い寄生虫で、一日に10万単位の数で産卵するとされています。

ライフスタイル

宿主にはさほど被害を与えず、小腸の中でブラブラしながら養分をいただきながら大量の卵をばらまく。という戦略です。

同じようにありふれた寄生虫の鉤虫や鞭虫のように腸に食いついて、という事はありませんので大型の寄生虫のわりには実害が少ないとされています。

しかし、めちゃくちゃな量の卵を産むため困ったものです。
また、バラまかれた卵は乾燥にも薬品にも強く、外界での処理は困難です。

 

 

症状

感染していても症状が現れない「不顕性感染」がほとんどです。

しかし、幼犬に多数の成虫が寄生した場合は、栄養分を回虫に吸収されてしまうため様々な症状があらわれます。

行動の変化

  • 元気がない
  • 異嗜(いし)例 土を食べるといった行動
  • 食欲不振
  • 吐く息が甘い

見た目の変化

  • お腹の異常なふくれ
  • 発育不良
  • やせる(削痩)
  • 皮膚のたるみ(皮膚弛緩)
  • 毛づやの悪化

起こる症状

  • 貧血
  • 便秘
  • 下痢
  • 腹痛

回虫が気管に入り込むと不快感から吐き出そうとして嘔吐する場合もあります。
また、寄生数が特に多いと大量の回虫が腸内で絡まってしまい詰まってしまった時には腸閉塞を起こす場合もあります。

 

 

原因

感染の始まりは4パターン

  1. 成熟した卵の入った糞などのが口から入る
  2. 感染した母犬の母乳から感染
  3. 感染した母犬の胎盤感染
  4. 待機宿主(ネズミ、昆虫など)の補食

 

 

犬回虫

感染した子犬のほとんどが母親からの経胎盤感染であって、感染子犬は生後3週目から虫卵を排出します。

(まれに経乳感染もある)
6ヶ月以上になると成虫は消化管から自然に排除されるため、成犬での虫卵はほとんど確認できません。
虫卵は排出後、10~20日で感染力をもつようになります。成虫の体長は雌で5~18cm、雄で4~10cmあります。

犬回虫の特徴は口から入った卵が孵化して腸で成虫になるのではなく体を一周して腸にたどり着き成虫になります。

 

 

胎盤からの感染

1.感染する

ほとんどの場合、感染している母親の胎盤から幼虫が移動して仔犬に感染します。
母親が子犬の時回虫を持っていれば、その子もほぼ100%回虫が感染します。
幼虫は胎児の肺に侵入して待機します。

 

2.出産する

子犬が産まれると肺から気管へと上がり、幼虫を咳で吐き出し、再び飲み込んで食道を通じて腸まで移動します。

 

3.小腸で育つ

小腸で栄養を吸収しながら、オス10cm、メス18cmくらいまで成長し1日約10万個の卵を産みます。
この地点までこの過程は約3週間かかります。

 

4.排出される

卵は糞と一緒に外界へ排出されます。この段階では感染力がありません。
外界で14日ほど発育して初めて、感染力を持ちます。
このまま次の生き物に摂取されるのを待ち続けます。

 

 

気管型移行 3か月未満の子犬まで

1.感染する

子犬が感染している母親の母乳、感染している母親の糞便を口にしてしまったなど経口感染から始まります。
回虫卵は腸内で孵化して幼虫となり、腸壁に進入します。

 

2.移動する

血流を介して肝臓へ、または、腸壁に穴をあけて、腹腔内から肝臓に達します。
肝臓 ➡ 心臓 ➡ 肺 ➡ 気管へとあがっていきます。
幼虫を咳で吐き出し、再び飲み込んで食道を通じて腸まで移動します。

 

3.小腸で育つ

小腸で栄養を吸収しながら、オス10cm、メス18cmくらいまで成長し1日約10万個の卵を産みます。
感染から1か月ほどで卵を産むようになります。

 

4.排出される

卵は糞と一緒に外界へ排出されます。この段階では感染力がありません。
外界で14日ほど発育して初めて、感染力を持ちます。
このまま次の生き物に摂取されるのを待ち続けます。

 

この時の仔犬の症状

  • 消化管通過中の虫による吐気、下痢が主症状です。
    また発育不良、腹部の膨満、貧血などもみられます。



 

 

全身型移行

生後3カ月以上の犬~成犬の場合の回虫の流れ

1.感染する

感染している糞便を口にしてしまったり、感染しているネズミや昆虫を捕食することによって回虫の成熟した卵を摂取することになります。

回虫卵は腸内で孵化して幼虫となり、腸壁に進入します。

 

2.全身へと拡散

血流に乗って肝臓に侵入、または、腸壁に穴をあけて、腹腔内から肝臓に達します。
肝臓 ➡ 心臓 ➡ 肺 ここから血流にのって全身へと拡散

 

3.休眠状態に入る

一週間後には全身の臓器や筋肉の中で、被嚢幼虫と呼ばれる休眠状態(殻に閉じこもる)となります。
これにより体の防衛反応である白血球などから身をひそめます。
この状態で約1~2年待機できる。

 

4.目ざめ

このようなメス犬が妊娠した場合、妊娠6週目ごろから休眠していた被嚢幼虫が再び動きだします。
そして血流から胎盤を介して胎仔へ移動をする。
生後も母乳を介して新生仔への感染源となります。どんどん虫の数が子犬の中に増えるわけですね。

しかし、犬がオスだった場合は、はずれです。その回虫は出番がくることはありません。

 

犬回虫は・・・

成犬は感染していても幼虫だけなので何の症状が出ることもありません。

また、虫卵は、仔犬の時期のみに排泄されて、イヌが大人になるとイヌ回虫はイヌの腸に住むことが出来なくなり、いなくなります。

気管移行型から体内移行型への変更時期は必ず3ヶ月前後で変わる訳ではなく、イヌの環境・性差・栄養状態などにより広い幅がある。

寿命は栄養状態などで異なるがおよそ1-2年です。 

 

 

犬小回虫

犬、猫とも主に感染ルートは
汚染糞便やネズミなど感染した待機宿主を捕食することにより感染します。

 

  • 食道 ➡ 胃 ➡ 小腸 感染してから2ヶ月前後で成虫になります。

 

犬小回虫の幼虫は体内移行を営まず、胎盤感染も起こさないので幼犬ではほとんど被害はなく、通常若犬猫、成犬猫で寄生がみられます。
虫卵は排出後、5~10日で感染力をもつようになります。

症状

症状は軽度の事が多く、毛づやが悪くなったり、食欲不振や嘔吐や下痢がみられることがあります。

 

 

 

猫回虫

腹部の膨隆、被毛の光沢と祖剛、下痢や便秘、貧血や重度では神経症状がみられる事があります。

 

 

 

1.感染する

感染した子猫のほとんどが経乳汁感染です。
他には、汚染糞便の経口摂取やネズミ、ミミズ、ゴキブリなどの感染した待機宿主を捕食することでも感染します。犬回虫のように胎盤感染はしません。

 

2.成長する

小腸で成虫になります。成虫の体長は雌で4~12cm、雄で3~7cmです。
ここで産卵して卵を排出します。

ココが違う!

犬回虫と違い、成猫になっても成虫は消化管内から自然に排除されない。
そう、ずっとお住みになるつもりのようです!!

 

3.糞と共に排出

虫卵は排出後、外界で成熟して10~20日で感染力をもつようになります。

 

 

 

  • 猫回虫は

ネコ回虫は、イヌ回虫と違って大人のネコの腸に生涯住み続けることが出来るので“砂場”での虫卵感染の問題となるのです。
また、自然に体内からいなくならないので日本の猫の20~40%が感染していると言われています。

 

 

人への感染

日本ではヒト回虫はほとんどいません。
しかし、犬や猫あるいはアライグマの回虫といった本来は人に取り込まれたくない回虫が誤って人に取り込まれてしまった時、人の健康に障害を与える可能性が生じます。

イヌやネコの回虫卵が免疫力のあるヒトの体の中に入った場合は、ほとんど問題ありません。
しかし、免疫力の弱いヒトや幼児では、虫卵が腸の中で孵化し、肝臓・目・神経など全身の内臓に移動して、いろいろな症状が出てしまうことがあります。

これを回虫移行症と呼びます。

 

回虫移行症

1.感染ルート

人(特に小児)への感染では、飼い犬、猫から、または犬猫が排便する公園の砂場や川岸、草叢にある虫卵を、何らかの形で経口摂取した場合に成立します。
その他、仔犬に口を舐められる際にも、気管や食道を移動中の子虫の感染をうけることもあります。

 

2.迷入

犬回虫が人の体内に侵入した時、本来のライフ・スタイルにしたがって子虫は人の小腸の壁にもぐりこみ移動を始めます。

しかし、人回虫以外の回虫では不適切な宿主の体内に入ってしまったため、人回虫のように小腸に戻ってくる事ができず肝臓、リンパ節、肺、脳、などあらゆる組織に入り込み、体内のどこかで行き詰まってしまいます。

これを幼虫の迷入といい、動き回る幼虫による病害を幼虫内臓移行症といいます。

この場合の症状は、発熱、腹部痛、倦怠感などで、

眼球に侵入した場合は眼球移行症で失明の可能性、中枢神経系に侵入した場合の脳脊髄線虫症で痙攣や運動障害、稀ですが突然死の可能性があります。
アライグマの回虫については、脳に留まりやすい傾向があります。

その後、幼虫は宿主の免疫反応によって捕らえられ、肝臓を主をとした諸臓器で被嚢幼虫という休眠状態となります。

  • 体内の組織内に寄生した幼虫に対しては、確実な治療法は存在しない。
  • 眼移行型の治療法も確立されていないが、レーザーによる凝固法がおこなわれる。

 

 

 

 

治療

虫下しが有効です。

寄生虫駆除薬

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小腸以外に留まっている回虫の幼虫に対する虫下しという意味での有効な薬剤による治療法はありません。
脳と目を除いては、人回虫以外の回虫の子虫にまぎれ込まれても人の健康上の問題とする必要は、今のところ日本国内では無さそうです。

 

 

 

 

予防

回虫症は気をつければ予防することができます。

 

手を洗う

回虫卵は、環境中での抵抗力が非常に強く、砂や土の中に混じって長期間生き続け、感染の機会を待っています。
ガーデニングのときなど手についていることがあります。
手洗いをしっかりおこないましょう。

 

食品は火を通す


土から野菜、野菜からまな板、まな板から肉へ虫卵が付着することもありえます。
しっかりと火を通すことで予防しましょう。
冷凍しても卵が生き残ることがあります。

 

熱湯消毒


回虫の卵は乾燥にも薬剤にも強いけど、お湯で死ぬので食器やペット用トイレなどは熱湯消毒も効果があります。

 

糞の始末


排泄されたばかりの便に混ざっている回虫卵にはまだ感染できる能力がありませんので、便の処理は手早く行って下さい。

 

幼犬・幼猫期の駆虫が重要

犬・猫回虫ともに母子感染の可能性があるため、とくに幼犬・幼猫期の駆虫が重要。

母子感染(特に胎盤感染)した場合
生後3週目から糞便中に虫卵が排泄されるので、すべての犬に対して生後3週齢までに駆虫薬投与を開始します。
また、3ヵ月までは2週間おきに再投与を行い、3~6ヵ月齢では毎月、その後も定期的に駆虫するのが望ましいとされています。

 

定期駆虫

猫では6週齢(犬と異なり、猫では胎盤感染がないため)から定期的に駆虫する。

 

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