寄生虫症

フィラリア症

フィラリア症とは、蚊を媒体として犬の体内にイヌフィラリア(犬糸状虫)という非常に小さな虫が入りこみ寄生することで起こる病気です。

予防をせず、検査もしていなかった場合、体内で成長した虫が住みつき何年もかけて、病気を進行させて、最終寄生場所である心臓や肺の動脈などをボロボロにしていきます。

フィラリアの感染幼虫が犬の体内に入ったからといって、すぐに体調に変化がでるものではないため、重症化してから気がつくことが多い病気です。

また、犬の性別、被毛の長短、毛色、年齢、体重やそのときの体調にかかわらず寄生率の差はありません。
長毛犬だから蚊に刺されないなどということはありません。

 

フィラリアってどんな虫?

フィラリア は、線形動物門双腺綱旋尾線虫亜綱旋尾線虫目糸状虫上科に属する動物の総称で、寄生虫の1種です。
フィラリアの成虫は、オスで体長約17cm、メスで約28cmと細長く、乳白色のソーメンのような形をしています。

 

フィラリア症の原因

蚊に刺されることでフィラリアに感染することで発症する病気です。

フィラリアの子虫であるミクロフィラリアを体内に宿した蚊に刺されることで体内に入るところからスタートします。

フィラリアが成虫となるには、フィラリアを媒介する蚊の体内でミクロフィラリアから感染力を持つ幼虫へ発育することが必要で、日本では約16種類の蚊がフィラリアを媒介します。

また、犬だけでなく猫や人への感染も報告されています

 

フィラリアのライフサイクル

1.蚊の体内に入る


まず蚊がフィラリアにすでに感染しているイヌの血液を吸うことで、血液中の子虫(ミクロフィラリア)を一緒に取り込みます。

これにより、レベル1 ミクロフィラリアは蚊の体内に入ります。

 

2.蚊の体内で成長する

 

ミクロフィラリアは吸血昆虫の体内で胸筋に移動し、脱皮を行いますが、その為には一定の気温が必要です。
寒い冬の間、予防しなくてもよい期間があるのは成長できないためです。
気温が16℃~34℃の条件がそろうと約2~3週間かけて、蚊の体内で1回脱皮してレベル2にバージョンアップします。
さらに、もう一回脱皮してレベル3 感染幼虫になります。

 

3.突入準備

レベル3 感染幼虫は、蚊が血液を吸うときに使う“ストロー”状の場所(器官)に移動します。
これによって血を吸うために針を犬の体に刺すことによって、蚊の針から犬の体内へ移行することができます。

その刺口から犬の体内にレベル3 感染幼虫が入り込みます。

 

4.犬の体内に侵入

この時点では、犬の体内に侵入しただけで、感染したことにはなりません。
当然ながら、犬にまったく変化はありません。
しかし、犬の体内に入ったレベル3 感染幼虫は、皮下組織などに侵入します。
脱皮してレベル4 体内移行幼虫に成長します。



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フィラリアの予防はこの地点

予防というので、体に入る前に入れない様にするというイメージをしてしまいますが、実際は、体内に入ってきたフィラリアの幼虫レベル3レベル4を駆虫しています。
フィラリア予防薬とは皮下~筋肉にいるフィラリアの幼虫を殺すお薬です。

 

 

5.血管を目指せ

感染から約2ヶ月かけて皮下組織や筋肉を移動しながら最終形であるレベル5 未成熟虫になります。
ここまで成長すると血管内侵入できるようになります。

 

6.旅立ち

血管内に侵入したレベル5 未成熟虫は静脈から血管に入って血液の流れに乗って肺動脈まで移動します。
心臓に向かい、最終の寄生場所である右心室に移行します。

 

7.成長期

血流に乗って心臓に移動したレベル5 未成熟虫は、肺動脈に住み着くようになり、右心室、肺動脈内で約3ヵ月間発育して成熟虫になります。
細いそうめんのような姿をしています。

 

8.出会い、そして放出
(感染から6~7カ月経過中)

その後、体内でオスとメスのフィラリアがそろったとき、レベル1 ミクロフィラリアが生まれはじめます。

レベル1 ミクロフィラリアは血液中に放出され、犬の全身を流れながら蚊に吸われる機会を待ちます。
成熟虫はそのまま約5,6年間は生存し続けます。

 

蚊が吸血する

感染して全身にレベル1 ミクロフィラリアを持った犬に蚊が止まり、血と共に蚊が吸い上げることで、汚染された蚊になり、次の犬にフィラリアが広がってしまうことになります。
1に戻る。

 

このように、蚊と犬の体内を巡回しながら子孫を増やしているのが、フィラリアという虫なのです。

 

フィラリア薬の有効成分表

お薬それぞれによってどのレベルの幼虫に効果があるのかが違います。
























L5
L4
L3
L2
L1
コリー安全性
駆虫可能 回虫
鉤虫
鞭中
ノミ
耳ダニ

フィラリア症の症状

体中に血液を送り出す心臓や肺の働きが邪魔されてしまい、「乾いた咳をする」、「運動をいやがる」などの軽い症状から、腎臓や肝臓の働きまで影響が出ることで、より深刻な症状がみられるようになってきます。

見た目の変化

  • 痩せてきた
  • 腹囲が大きくなってきた(腹水)
  • 栄養障害から抜毛
  • 毛づやが悪くなる
  • 尿が赤くなる
  • 黄疸

 

行動の変化

  • 運動を嫌がる。運動すると疲労が激しい
  • ゼーゼーした咳をする
  • 失神することがある
  • 貧血気味になってきた

これらは病変が進行していることを示しているので、早期の対象療法が必要です。

 

 

慢性症状と急性症状と二種類あり、慢性症状がフィラリア症の95%を占めると言われています。

慢性症

  • 発咳
  • 運動を嫌う
  • 疲れやすい
  • 辛そうに歩く
  • 体重減少
  • 腹水(重篤になったとき)
  • 失神

慢性症の場合、フィラリアが寄生していることと、分泌物や排泄物により起こる肺高血圧症が主たる原因となり、二次的にさまざまな症状を示す心臓病となります。

心臓の機能が充分でなくなることで全身の臓器がうっ血状態になり、肝臓・腎臓・肺などの重要臓器が機能不全を引き起こすようになります。

これらの病変は通常は治療しても元のようには戻らないことが多く、最終的には死にいたることもあります。

 

急性症

フィラリアが感染して起こるフィラリア症はそのほとんどが慢性経過をたどりますが、時には重篤になることが多い急性症もあります。
急性症はべナ・ケバシンドロームという状態におちいります。

 

べナ・ケバシンドローム

成長した成虫のフィラリアは30cmくらいの長さのそうめんのようになります。
こいつが心臓のなかで絡み合って弁に詰後大静脈塞栓症(ベナケバ)まります。

この状態をといいます。

後大静脈に虫がぎっしり詰まってますから血液が流れることが出来なくなっていますが、心臓は生きる為に無理にでも血液を流そうとしますから赤血球に負担がかかりどんどん壊れていきます。
どんどん血液が壊れる為に急速に貧血が進行します。
この状態は非常に悪く食べることも歩くこともできなくなります。

ワインのようなおしっこがでて呼吸困難や突然死などが起こります。
こうなると外科手術しなければ数日で死亡します。

また小型犬ほどベナケバになりやすく、たった3匹のフィラリアでも心臓が小さいからすぐ詰まります。

 

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