マラセチア皮膚炎(脂漏症)はマラセチアという酵母の一種が原因で引き起こされる皮膚炎です。
マラセチアはカビ(真菌)の一種で、その中でも酵母菌と呼ばれるものに属します。
マラセチアは犬の外耳道、肛門嚢、指の間、唇、皮膚粘膜などに常在しているありふれた酵母で
通常は犬の皮脂腺から分泌される脂質を栄養分として、通常はひっそりと暮らしています。
しかし、何らかのきっかけで増えすぎてしまい炎症を起こさせるのです。
体にいる常在菌なのでうつったりする病気ではありません。
症状
- 皮膚のかゆみ
- 赤み
- 脱毛
- べたつき
- 脂っぽいフケ
これらの症状が見られ、”やや酸っぱいような甘い感じの発酵臭” が特徴としてみられます。
若い犬から老犬まで幅広く認めらる皮膚病で慢性化すると毛が抜け、黒ずみ皮膚が分厚くなります。
発生しやすい部分
- 唇
- 耳
- 四肢の内側
- わきの下
- 太ももの付け根
- しっぽの付け根
梅雨の時期に急に悪化する傾向が見られます。
こんな風に始まるよ!
マラセチア菌は、皮脂をリパーゼという酵素を使い分解し栄養として暮らしています。
皮脂を分解
グリセリン & 遊離脂肪酸 に分解される。
遊離脂肪酸を別の常在菌が分解する
別の菌が栄養源にして分解されることで肌が潤い、皮膚に悪影響を及ぼす雑菌から
保護する役割を持っている。
しかし、様々な要因でマラセチア菌が増えすぎると・・・
生成される遊離脂肪酸が増えすぎ、別の菌の分解を上回りあまる。
余った遊離脂肪酸が問題!
遊離脂肪酸が酸化して、毒性のある過酸化脂質に変質します。
これにより炎症反応が起こるのです。
そのため、マラセチア菌が悪いわけではないですが!
”マラセチア菌が増えすぎてしまう条件”
これこそがこの病気の発生原因とといえるでしょう。
マラセチア菌が増える要因
マラセチア菌が異常に増えてしまう要因というものがいくつか存在します。
食生活
摂取する栄養の偏りが原因の場合もあります。
脂質が多すぎる、脂質が少なすぎる、ビタミン・ミネラル不足(銅・亜鉛・ビタミンAなど)などです。
ビタミンやミネラルは皮脂の分泌量をコントロールしており不足すると調整できずに分泌量が多くなります。
皮膚環境の変化
長すぎる被毛による温度や湿度の上昇、成長や老化に伴うしわの出現、未知の理由による角化異常や皮脂腺からの異常分泌などです。
季節によるもの
マラセチア菌は湿気を好む性質があります。
そのためじめじめした梅雨の湿気や暑さがマラセチア菌を増やす要因になります。
遺伝
発症しやすい犬種がいくつか確認されています。
- ウェストハイランドホワイトテリア
- トイプードル
- バセットハウンド
- ダックスフント
- シーズー
- ジャーマンシェパード
- シルキーテリア
- イングリッシュセター
日本では特にシーズーが多いようです。
ホルモン異常
甲状腺ホルモンや性ホルモンなど、体内におけるホルモンの分泌障害が脂漏症を引き起こす可能性があります。
アレルギー反応
アトピー性皮膚炎や接触性アレルギーを起こしやすい犬ではやや発症しやすいと言われています。
もともと皮膚の抵抗力が弱いので他の犬よりも発症しやすいでしょう。
アトピーは皮膚バリアのバランスが崩れている状態です。
角質層や表層の傷を治そうとするために脂分を分泌します。
しかし、それにより皮脂を栄養源とするマラセチア菌が増殖し炎症が起こります。
ブドウ球菌
マラセチアは、皮膚の常在菌であるブドウ球菌と共生関係にあると考えられています。
何らかの理由でブドウ球菌が多くなりすぎたり少なくなりすぎたりすると、共生しているマラセチアの生活リズムが崩れ、異常増殖につながってしまう可能性があります。
脂漏症と膿皮症が併発しやすい理由も、ここにあるのかもしれません。
肥満
肥満はマラセチア皮膚炎にかかりやすい傾向にあります。
太りすぎないようにゴハンの管理や運動を積極的に行い、適正体重を心がけましょう。
肥満はさまざまな病気の原因となります。
治療
症状のレベルにより、内服薬(抗生物質や抗真菌剤)を投与されます。
基本的には週2~3回の薬用シャンプーと内服薬を使用します。
アレルギーのある犬や猫にはステロイド剤が使用されることもあります。
症状が出てしまっている場合、薬用シャンプーなどを使用します。
自然治癒力で治る病気ではありません。
きちんと最後までケアする必要があります。
薬用シャンプー
殺菌効果のある薬用シャンプー
皮膚炎が悪化する前に過剰な皮脂を取り除、増えすぎたマラセチア菌を除去することで悪化を防ぐことができます。
下記のような有効成分が含まれてるシャンプーです。
ミコナゾール硝酸塩
アゾール系という抗真菌成分です。
効果は皮膚に発生した真菌(カビ)の細胞膜成分であるエルゴステロールの合成を阻害します。
それにより真菌の成長が阻害されます。
クロルヘキシジングルコン酸塩
皮膚に対する刺激が少なく、臭気がほとんどない生体消毒薬です。
広範囲の微生物に作用し、殺菌力を発揮するのみならず、皮膚に残留して持続的な抗菌作用を発揮する。
汗などの体液存在下でも不活化しにくい持続性のある成分です。
オロナイン軟膏の主成分のひとつでもある。
これら「クロルヘキシジングルコン酸塩」「ミコナゾール硝酸塩」は、経皮吸収が少ないため、全身副作用のリスクを抑えながらご使用いただけます。
おすすめ
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抗菌・抗真菌成分の入ったシャンプー【マラセチア皮膚炎用】
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ミコナゾール硝酸塩、クロルヘキシジングルコン酸塩配合により、
マラセチア菌とスタフィロコッカス菌(ブドウ球菌)を殺し、余分な皮脂分や汚れを洗い流し、犬の皮膚を清潔に、また健康に快適に保ちます。
塗り薬もあります
感染部分に直接薬剤が塗れるので便利な塗り薬
患部が小さい時などこちらの方が使いやすく、体への影響も少ない。
ルリコナゾ1%
クリームタイプの抗真菌薬:ルリコナゾ 有効成分ルリコナゾールは皮膚に寄生した真菌(カビ)などの細胞膜を壊すことができます。 皮膚にとどまる性質があるのでしっかりと真菌に効果を発揮できるのが特徴。 犬・猫におけるマラセチア皮膚炎(脂漏性皮膚炎)や皮膚糸状菌症などの真菌感染症に用いることができます。
ケラグロAGローション2%
ローションタイプの抗真菌薬:ケラグロ 有効成分ケトコナゾール配合 皮膚に寄生したカビなどの真菌の細胞膜を破壊して殺菌的に働きます。 液体なので外耳炎にも使えます。 界面活性剤・アルコール不使用のローションタイプです。
予防
皮脂が多いとマラセチア菌の増殖につながります。
また、健康であれば体の抵抗力でさまざまな病気から守る力が付きます。
普段から元気になるよう心がけましょう。
シャンプーしよう
好発犬種(かかりやすい犬種)や皮脂がでやすい体質の場合、
定期的に低アレルギーシャンプー)などをして余分な皮脂を落としましょう。
ダーマケアナチュラルシャンプー
天然成分のみで構成された低刺激性シャンプー
敏感肌のペットにも使用できるよ。
食事改善
犬の免疫力を保つには栄養バランスの良い食事、この場合品質の良いドッグフードですね。
ビタミンやミネラルは皮脂の分泌量をコントロールしており不足すると調整できずに分泌量が多くなります。
食べさせ過ぎないも大切です。
肉や野菜のトッピング、おやつを食べさせている場合、ドッグフードを減らしたりしてバランスをとりましょう
運動をたっぷり
毎日のお散歩、足腰の筋力の維持、基礎代謝の低下を防ぐ大切な日課です。
体脂肪が付くのも抑えられるので肥満の予防にもなります。
また、胃腸も筋肉の一部なので運動をすることで活性化します。
血行がよくなり腸の健康を維持することによって免疫力を高めることができます。
ストレス
ストレスを感じさせないことも大切です。
ストレスは免疫力を低下させる要因です。