ニキビダニ症(毛包症、アカラス症)

症状

子犬の頃は目や口のまわり、前足などが特に感染しやすい部分です。
症状は軽く9割が自然治癒するようです。

 

限局性ニキビダニ症(別名:落屑型)

1歳未満の純血種に多い傾向があります。
局所的に脱毛斑が見られたり、紅斑と皮膚がボロボロしてきたりします。初期症状は何の痒みもありません。
病変は6~12週間ほどで消えます。
再発も少ないようです。

 

汎発性ニキビダニ症(別名:膿疱型)

初めの2~3日は限局性と同じ症状なのですが、病状の進行は速く、症状が出る範囲が急速に広範囲となります。
ニキビのような膿疱がたくさんできて、皮膚がただれます。

そのまま放置すると脱毛部分は頭から首へ、前足から肩や胴まで広がり、病巣から滲出液が出てきます。粘度の高い体液でベチョベチョして、湿疹様になり皮膚がただれます。

患部とよく接触する場所から順に波及し、背中は通常最後に侵されます。

この弱った皮膚に、二次的な細菌感染が起こり、痒みや痛み(膿皮症)が増してきます。
発症後約1ヶ月で全身膿皮症となり、放っておくと気管支肺炎や敗血症で死にいたることもあるのです。

治療をすれば多くは良化しますが、なかには治療困難で成犬になってもずっとひきずってしまうことがあります。

※このタイプは遺伝的素因が強いといわれています。
ダニが遺伝するのではなく、ダニの増えやすい、免疫学的な体質が遺伝するようです。
遺伝のタイプは明らかにはされていませんが、劣性遺伝ともいわれているようです。

 

 

原因

体長が0.2~0.3ミリほどの寄生虫であるニキビダニが原因です。
犬の毛の毛包や皮脂腺に寄生して炎症を起こします。そのため毛包虫症とも呼ばれます。
体力や免疫力の低下、遺伝、さまざまな要素が発症に関係しているため、健康な犬の場合発症しません。

このダニは、生まれたばかりの子犬が、ダニに寄生されている母犬の体に寄り添って、母乳を吸うなどの濃密な接触によって感染します。
母親と子犬のような長時間、濃密な接触がないかぎり、一般的には他の犬への伝染はないと考えられています。

 

  • 子犬
    主に生後3~6か月の子犬がなりやすく、その中でも発症するのは30%ほどです。

 

  • 成犬
    成犬の場合はアトピー性皮膚炎、甲状腺機能低下症、糖尿病などの基礎疾患があると発症しやすいと考えられている。さらに膿皮症を持っている犬は症状が重症化しやすい。

 

  • 老犬
    とても困難なのは、老犬です。
    老犬のニキビダニ症には積極的な駆虫が必要となり、その発症の背景をよく検討することが重要です。その他に基礎疾患がないかどうか検査し、他の疾患があればそれを考慮しながら慎重に治療を進めていきます。

 

  • 人間
    人間には人間のニキビダニがあるので、犬のニキビダニに感染すことはありません。

 

 

治療

駆除薬を使ってニキビダニを駆除します。完全な駆除は難しく、根気よく治療していく必要があるようです。

 

シャンプー

幼犬のニキビダニ症では限局的な発症が多く、その約90%が3~8週間で自然治癒するといわれています。

ニキビダニは皮脂を好みます。毛穴のなかの垢を食べて暮らしているので、余計な皮膚の皮脂成分、角質など、毛穴のなかの汚れを効果的にとりのぞいていく必要があります。

「サリチル酸」、「過酸化ベンゾイル」という成分が効果的ですのでサルファサリチル酸シャンプーによる洗浄のみで経過を観察したりします。
この治療で治癒率は(一般的には)50%です。

殺ダニ剤

殺ダニ剤のアミトラズで薬浴をします。

薬浴には「アミトラズ」という薬剤を使用することが多いと思います。
(※アミトラズ:日本では適用外使用となります。海外では犬用治療薬として広く使用されています)

毛穴がつまっていると薬剤がニキビダニにうまく届きませんので、必ず前日に上記の角質溶解シャンプーで皮膚の洗浄をおこないます。
アミトラズはぬるま湯で規定の量にうすめて使用します。患部の毛穴に十分しみこませるように塗布していきます。薬浴後は、水ですすがず、軽くタオルでふいた後、風乾させます。
これを1~2週間に一回のペースでおこないます。

 

殺ダニ剤は幼ダニ、若ダニ、成ダニに効いても、卵には全く効きません。
生き残った卵が孵化して繁殖し、再発してしまうのです。

 

フロントラインも駆虫効果は上記の治療にくらべると低いですが、多少のダニの鎮静効果はあるようです。

 

 

駆虫薬の内服

ニキビダニには、フィラリア予防薬と同じ薬をフィラリア予防時の約300倍もの用量で定期的に投薬します。
しかしフィラリア予防の時と比較して300倍くらいの量を毎日服用しますので費用が大変です。

そこで犬用のフィラリア予防薬ではなく牛やブタ、馬用のフィラリア予防薬を流用して費用が大きくならないようにします。

 

具体的には、イベルメクチンやミルベマイシンなどです。ただしイベルメクチンに関しては、フィラリアを保有している犬には使えません。

コリー種の注意

イベルメクチンの使用はしないほうが良いでしょう。
コリー、シェットランドシープドッグ、オールドイングリッシュシープドッグ、オーストラリアンシェパードといった犬種においては、遺伝的に重い副作用を引き起こすことがあります。

「イベルメクチンショック」
これは血液脳関門(体循環している異物や薬物が脳や脊髄に流入して障害を起こさないようにする生体内防御機構)の機能異常によるといわれています。コリーではこのバリアー機構の一部に欠損があって、うまく異物(薬物)を代謝・排泄できないようです。

症状は、神経細胞の活動を抑制、麻痺させて、ふらつきなどの運動失調から昏睡、死にいたることもあります。
症状の出現は、投薬後間もなく~数日後と幅があります。決定的な治療方法はありません。

コリーで薬浴の効果がない時は「ミルベマイシン」の内服をします。
ただし、高価な治療となるので費用の負担が重くなります。

 

このようにコリーの場合、治療に大きな制限がある(特効薬が使えない)ため、他の犬種にくらべて負担が大きくなります。

 

 

抗菌剤

2次的に細菌感染を起こし、症状を複雑化させていることが多く、その場合は抗生剤も併用します。
いったん症状が表面的に改善されても途中で薬をやめてしまわないでください。

 

 

 

予防

ニキビダニは完全な駆除が難しいので、治療が長期におよぶケースがあります。
早期発見、早期治療が重要です。

もし顔面や前足などに、脱毛などのニキビダニ症の初期症状らしき皮膚病変を発見したら、すぐに動物病院を受診して適切な治療を受けましょう。症状が軽い子犬のケースでも治療には最低1ヶ月はかかります。

症状がひどかったり慢性化したり、再発した場合には、数ヶ月~半年、時には1年前後治療を続けてなければならないこともあります。
早いほうが被害も費用も軽く済みます。

 

発症には遺伝的な素因、基礎疾患、体力や免疫力の低下が関係していることから、子犬期から十分な栄養管理と体力維持に努め、元気で健康に育てることが予防の第一歩といえます。

また、発症している犬を繁殖犬としないことが最も大切です。
皮膚を清潔に保つのも予防の一つとなるでしょう。


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