ニキビダニ症(毛包虫症、アカラス症)

犬の被毛の根元にある皮脂腺に、ダニの一種である毛包虫が多数寄生することによって、脱毛や皮膚炎を起こします。
犬がかかる代表的な皮膚病のひとつで、かつては治りにくい病気でした。

 

症状

  • 目のまわり
  • 口、下あご
  • 前脚の前面

このような皮脂腺が多く分布する皮膚に感染しやすいので症状が現れます。

初期のころはあまりかゆみがなく、飼い主が脱毛によって気が付くでしょう。
しかし、毛の抜けた部分は徐々に広がり、やがてニキビのような膿疱がたくさんできて、その部分の皮膚がただれたようになります。

広がっていくにつれて、頭や背中、腰、肛門の周囲や下腹部、ひざの裏側や足先などにも脱毛とただれがみられるようになります。
このようになってきた場合にはかゆみも伴い、ひどいと全身に病巣が広がっていきます。

ときには患部が細菌に感染して、化膿やびらんをおこすこともあります。
症状は軽く9割が自然治癒するようです。

 

限局性ニキビダニ症
(別名:落屑型)

局所的に脱毛斑が見られたり、紅斑と皮膚がボロボロしてきたりします。
初期症状は何の痒みもありません。
1歳未満の純血種に多い傾向があります。

病変は6~12週間ほどで消えます。
再発も少ないようです。

 

汎発性ニキビダニ症
(別名:膿疱型)

初めの2~3日は限局性と同じ症状なのですが、病状の進行は速く、症状が出る範囲が急速に広範囲となります。
ニキビのような膿疱がたくさんできて、皮膚がただれます。

そのまま放置すると脱毛部分は頭から首へ、前足から肩や胴まで広がり、病巣から滲出液が出てきます。

滲出液は粘度の高い体液でベチョベチョして、患部は湿疹様になり皮膚がただれます。

患部とよく接触する場所から順に波及し、背中は通常最後に侵されます。

 

膿皮症に注意

この弱った皮膚に、二次的な細菌感染が起こり、痒みや痛みなどの症状が起こります。
これを膿皮症といいます。

発症後約1ヶ月で全身膿皮症となり、放っておくと気管支肺炎や敗血症で死にいたることもあります。

治療をすれば多くは良化しますが、なかには治療困難で成犬になってもずっとひきずってしまうことがあります。

※このタイプは遺伝的素因が強いといわれています。
ダニが遺伝するのではなく、ダニの増えやすい、免疫学的な体質が遺伝するようです。
遺伝のタイプは明らかにはされていませんが、劣性遺伝ともいわれているようです。

 

原因

体長が0.2~0.3ミリほどの寄生虫であるニキビダニが原因です。
非常に小さいため肉眼で確認することはできません。
また、皮膚の毛包内に寄生しているため皮膚組織ごと採取して、顕微鏡で確認しないと発見することはできません。

 

犬の毛の毛包や皮脂腺に寄生して炎症を起こします。そのため毛包虫症とも呼ばれます。
体力や免疫力の低下、遺伝、さまざまな要素が発症に関係しているため、健康な犬の場合発症しません。

このダニは毛包虫に感染している犬に接触することで感染します。

 

 

子犬

生まれたばかりの子犬が、ダニに寄生されている母犬の体に寄り添って、母乳を吸うなどの濃密な接触によって感染します。
母親と子犬のような長時間、濃密な接触がないかぎり、一般的には他の犬への伝染はないと考えられています。

主に子犬の性的に成熟していく時期である生後4~9カ月の頃によく発症します。
その中でも発症するのは30%ほどです。

 

成犬

潜在的には犬の半数以上が毛包虫を持っていると言われていますが、それらの犬が全てこの病気を発症するわけではありません。

発症や進行には犬種による発病のしやすさ、個々の犬の免疫や抵抗力の違い、ホルモンのバランス、給餌の傾向などが関係しているようです。

成犬の場合はアトピー性皮膚炎、甲状腺機能低下症、糖尿病などの基礎疾患があると発症しやすいと考えられています。

さらに、膿皮症を持っている犬は症状が重症化しやすい。

 

老犬

とても困難なのは、老犬です。
高齢になってから発症すると治りにくいのとが特徴で、老犬のニキビダニ症には積極的な駆虫が必要となります。

これは年齢によるホルモンバランスの乱れや抵抗力の低下が原因と考えられます。

全身的な皮膚疾患になってしまうことも多く、四肢や体幹部に発疹がたくさん見られ、かさぶたができてしまうほどです。
かゆみと痛みを感じ、半数の犬は基礎疾患が見られます。

 

人間

人間には人間のニキビダニがあるので、犬のニキビダニに感染することはありません。

 

 

好発犬種

どんな病気にも遺伝的に発症しやすい犬種というものがあります。

  • チャイニーズシャーペイ
  • パグ
  • シーズー
  • ブル・ドッグ
  • グレート・デーン
  • ワイマラナー

テリア種

  • ウエスト・ハイランド・ホワイト・テリア
  • スコティッシュ・テリア
  • ボストン・テリア
  • エアデール・テリア

 

治療

発見したら早い段階で治療を開始することが重要です。

ダニを殺す抗生物質の内服と、殺ダニ剤による薬浴などを並行して行います。
治療は長期間を要しますが、根気よく治療していくで完治させることが可能です。

 

基礎疾患を治療する

基礎疾患がないかどうか検査し、他の疾患があればそれを考慮しながら慎重に治療を進めていきます。

  • 腫瘍
  • クッシング症候群
  • 甲状腺機能低下症
  • 慢性消耗性疾患

このような基礎疾患を治さないと根本的な解決にならない場合もあります。
また、その治療のための免疫抑制作用を持つ薬剤の長期投与なども、発症の要因として考えられます。

 

シャンプー

幼犬のニキビダニ症では限局的な発症が多く、その約90%が3~8週間で自然治癒するといわれています。

ニキビダニは皮脂を好みます。
毛穴のなかの垢を食べて暮らしているので、余計な皮膚の皮脂成分、角質など、毛穴のなかの汚れを効果的にとりのぞいていく必要があります。

「サリチル酸」、「過酸化ベンゾイル」という成分が効果的ですのでサルファサリチル酸シャンプーによる洗浄のみで経過を観察したりします。
この治療で治癒率は(一般的には)50%です。

 

サリチル酸シャンプー

 

過酸化ベンゾイルのシャンプー

 

殺ダニ剤

殺ダニ剤のアミトラズで薬浴をします。

薬浴には「アミトラズ」という薬剤を使用することが多いと思います。
(※アミトラズ:日本では適用外使用となります。海外では犬用治療薬として広く使用されています)

毛穴がつまっていると薬剤がニキビダニにうまく届きませんので、必ず前日に上記の角質溶解シャンプーで皮膚の洗浄をおこないます。
アミトラズはぬるま湯で規定の量にうすめて使用します。
患部の毛穴に十分しみこませるように塗布していきます。

薬浴後は、水ですすがずに、軽くタオルでふいた後、乾燥させます。
これを1~2週間に一回のペースでおこないます。

殺ダニ剤は幼ダニ、若ダニ、成ダニに効いても、卵には全く効きません。
生き残った卵が孵化して繁殖し、再発してしまうのです。

 

アミトラズ入手が日本では難しいこと、すべての犬が完治しないことなどを考えるとあまり有効ではないかもしれません。

 

駆虫薬の投薬

ニキビダニには、フィラリア予防薬と同じ薬をフィラリア予防時の約300倍もの用量で定期的に投薬します。
しかし、フィラリア予防の時と比較して300倍くらいの量を毎日服用しますので費用が大変です。

そこで犬用のフィラリア予防薬ではなく牛やブタ、馬用のフィラリア予防薬を流用して費用が大きくならないようにします。

具体的には、イベルメクチンやミルベマイシンなどです。
ただしイベルメクチンに関しては、フィラリアを保有している犬には使えません。

 

イベルメクチンショック

コリー、シェットランドシープドッグ、オールドイングリッシュシープドッグ、オーストラリアンシェパードといった犬種においては、イベルメクチンに対して遺伝的に重い副作用を引き起こすことがあります。
イベルメクチンの使用はしないほうが良いでしょう。

これは血液脳関門(体循環している異物や薬物が脳や脊髄に流入して障害を起こさないようにする生体内防御機構)の機能異常によるといわれています。
コリーではこのバリアー機構の一部に欠損があって、うまく異物(薬物)を代謝・排泄できないようです。

 

症状
神経細胞の活動を抑制、麻痺させて、ふらつきなどの運動失調から昏睡、死にいたることもあります。
症状の出現は、投薬後間もなく~数日後と幅があります。決定的な治療方法はありません。

コリーで薬浴による効果が見られない時は「ミルベマイシン」の内服をします。
ただし、高価な治療となるので費用の負担が重くなります。

このようにコリーの場合、治療に大きな制限がある(特効薬が使えない)ため、他の犬種にくらべて負担が大きくなります。

 

ダニ駆除薬

これらがニキビダニに効果があるとされています。


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アドボケート

  アドボケートは、犬用の内外部寄生虫駆除薬で下記の寄生虫に効果を発揮します。 フィラリア ノミ ミミヒゼンダニ 犬回虫、猫回虫 犬鉤虫、猫鉤虫       & ...

 

二次感染対策

成犬のニキビダニ症は治療に時間がかかるため、駆虫薬の長期投与が必要になる場合も多く、傷口から2次的感染として細菌や真菌などによる感染を起こし、症状を複雑化させていることも見られます。

その場合は抗生剤も併用します。
いったん症状が表面的に改善されても途中で薬をやめてしまわないようにしましょう。

 

 

 

予防

ニキビダニは完全な駆除が難しいので、治療が長期におよぶケースがあります。
早期発見、早期治療が重要です。

もし顔面や前足などに、脱毛などのニキビダニ症の初期症状らしき皮膚病変を発見したら、すぐに動物病院を受診して適切な治療を受けましょう。
症状が軽い子犬のケースでも治療には最低1ヶ月はかかります。

症状がひどかったり慢性化したり、再発した場合には、数ヶ月~半年、時には1年前後治療を続けてなければならないこともあります。
早いほうが被害も費用も軽く済みます。

皮膚を清潔に保つのも予防の一つとなるでしょう。

 

健康に育てよう
発症には遺伝的な素因、基礎疾患、体力や免疫力の低下が関係していることから、子犬期から十分な栄養管理と体力維持に努め、元気で健康に育てることが予防の第一歩といえます。

繁殖の際には注意
一度寄生されると完全に駆逐することは難しく、発症している犬を繁殖犬としないことが最も大切です。

 

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