ネコは春に犬は初夏の頃にかなり多くの脱毛が見られます。
これは換毛といって、気温の上昇に体が反応して冬毛が抜け落ちて、生え変わるためのもので病気ではありません。
それ以外の普段でも、人間や犬、猫も同じように毛はつねに少しずつ抜けかわり、その後には新しい毛が生えて、正常な状態を保っています。
とくにワンコの毛は、毛根にある皮脂腺から分泌される脂肪に覆われて、これによって毛も皮膚も保護されています。
しかし、初夏から夏以外の季節に全身の毛、または体の一部の毛が異常に抜けるようなら、 皮膚病、ホルモン分泌の異常、 あるいは外部寄生虫などが考えられます。
皮膚病はいろいろな原因が考えられ、脱毛と同時にほかの症状が生じていることが少なくありません。
顔、肢、脇、背中
アトピー、吸引性アレルギー
全身に症状ができますが、特に皮膚の薄い部分
- 足先
- 耳
- 顔
- 脇の下
- おなか
- 足の付け根
このあたりに起きやすくかゆみも強いのが特徴です。
そのためかゆみでかきむしることによって、毛が抜けたり血が出たりします。
アレルギー反応によって引き起こされているため、原因は様々なアレルゲンが考えられます。
アトピー性皮膚炎について詳しく
接触性アレルギー
接触性アレルギーは、特定の物質が皮膚に触れて起こるアレルギーです。
首輪が原因なら首まわりと言ったように、アレルゲンに触れた部分だけに症状が起こるのが特徴です。
そのため接触する可能性がある部分なら、どこでも起こりえます。
そのほとんどの場合に不快な痒みが続き、赤い斑点や発疹が見られるようになります。
また、犬が何度も掻いているうちに、皮膚が傷付いてカサブタができたり、ただれてしまう場合があります。
食物性アレルギー
口の周りなど食べ物がふれるところ、目のまわり、耳の奥の方なと頭部を中心に症状が現われます。
かゆみ、発疹、抜け毛などが起こります。
下痢やおう吐、指の間をしつこく舐めるなどの症状が起こっている場合
食物性アレルギーが疑われます。
かかりやすいのは若い犬と老犬です。
お尻から背中
おしりから背中、お腹周り、耳の後ろといったあたりの脱毛がある場合
ノミアレルギー
耳の後ろ、背中の腰からしっぽやお尻、後ろ足の付け根にかけて、おなかなどに赤い発疹やじんましんができて、とてもかゆがります。
体を終始かきむしったり、噛んだり舐めたりを繰り返すため皮膚を傷つけて、二次感染する恐れがあります。
一晩中寝れないほどのかゆみがともなうこともあり、慢性化すると脱毛、色素沈着など皮膚の変化が起こります。
左右対称に抜ける場合
ホルモンが原因の皮膚炎の場合、左右対称に脱毛が起こる可能性があります。
クッシング症候群 (副腎皮質機能亢進症)
はじめのうちは両耳の毛がうすくなるところからはじまり、 しだいに頭と肢以外の毛をのぞくほとんど全身の毛が左右対称に抜けるようならば、ホルモン分泌の異常が考えられます。
副腎皮質機能亢進症かもしれません。
甲状腺機能低下症
肢を中心に背中とお腹の毛が左右対称で毛が抜けます。
特に胴体部分(特に腹周り)、しっぽ、頚部によく見られます。
主に部分的に脱毛がみられるのが特徴です。
その他に症状として
- 皮膚が乾燥してフケが目立ちます
- 全体的に毛が薄くなります。
- 皮膚が黒ずんだり厚くなったりします。(色素沈着と皮膚の肥厚)
甲状腺とは喉の下の両脇にある、甲状腺ホルモンの分泌器官です。
甲状腺ホルモンは、エネルギーの代謝やタンパク・ビタミン・脂質代謝などに作用するため、このホルモンの欠乏は身体の活動に関するものから皮膚まで、あらゆる影響を及ぼしてしまいます。
そのため甲状腺機能低下症になると基礎代謝が落ちるので、心臓や皮膚、内臓など各器官のバランスが乱れてしまうのです。
その影響で脱毛が見られます。
どの年齢でも発症する可能性がありますが、特に中~大型犬がかかりやすい傾向にあるようです。
円形に抜ける場合
皮膚真菌症の可能性大。
この場合は抜けたというよりも切れているように毛が抜けている事があります。
皮膚糸状菌症
直径数ミリから数センチの円形または楕円形の脱毛が起こるのは、真菌に感染したかもしれません。
- 犬の顔のまわり
- 耳
- 肢など柔らかい部分
こういった所に赤い発疹がともなった円形脱毛がおこり、進行するにつれて徐々に大きくなって全身に広がります。
この症状は痛みやかゆみがないので、いつも通り生活していますが、抜け落ちた後の被毛にはふけのような細かい皮膚片が付着します。
真菌にはさまざまな種類がありますが、ほとんどは毛根に感染するため、毛がもろくなって切れやすくなったり、脱毛が起こります。
成犬での発症は少ないですが、子犬や高齢犬での発症が多く全身性の疾患や免疫力の低い犬なども発症が多い傾向にあります。
全身に広範囲に抜けている
抜け毛が全身に広がり広範囲に広がる状態
さすがに明らかな違和感がある
膿皮症
皮膚の常在菌である「ブドウ球菌」が異常繁殖して病状化したものを総称して膿皮症と呼びます。
膿皮症は感染するスピードが早いので、一か所発疹が出来れば身体のあちこちにどんどん増え、完治するまでに時間を要します。
炎症が強く出るため、強いかゆみから掻いたり、かんだりしてどんどん皮膚が傷ついて行きます。
そのため短期間のうちに広範囲の脱毛が起こります。
症状は顔、脇、指の(趾)間、内股などで、犬種により好発部位は異なります。
お尻、外陰部
お尻の周辺での脱毛が起こる場合
性ホルモン異常
性ホルモンの異常によって分泌量が過剰になり脱毛が起こります。
- 去勢したオスの場合
テストステロンが減少してしまうことで、しっぽのつけ根やおしり周り、わき腹などに脱毛が現れるようになります。
- メスの場合
エストロゲンが過剰に増え、生殖器や肛門周辺に脱毛が見られます。
性ホルモン分泌異常が起きるとオス、メスともに発情周期がくるってしまうので繁殖能力に支障をきたすようになり、発情期間も短くなります。
眼や口の周り
ニキビダニ症
初期症状としては目や口の周り、手足の先端に脱毛やフケが起こります。
かゆみはありません。
脱毛した箇所の皮膚もきれいなピンク色をしています。
ニキビダニに寄生されることによって発症しますが、寄生されてもすべての犬が発症するわけではありません。
皮膚の免疫力が低下している幼犬や、老犬に見られることが多いのが特徴です。
多くの場合、感染源は母犬からで授乳の際に子犬に感染するようです。
疥癬(かいせん)
疥癬とは(イヌセンコウヒゼンダニ)というダニが皮膚に寄生することでおこる病気です。
このダニはダニは皮膚の角質層にトンネルを掘り、その中で産卵したり排泄を行ったりして、これによって強いアレルギー反応が起こります。
特に毛が少なくやわらかい場所である耳、顔、肘、腹部やヒゼンダニが地上からはい上がって感染する場合は四肢にも多く皮膚病変が現れます。
症状としては、痒み、脱毛、赤み、ポツポツとかさぶたができます。
重症化すると全身が脱毛してかさぶただらけになってしまいます。
頭と肢以外の体幹部分
アロペシアX
X脱毛症とも言われる原因がわからない脱毛症です
傾向としてポメラニアン、チャウチャウ、キースホンドといった北方系の犬種に見られることがあります。
性ホルモンや成長ホルモンそして副腎ホルモンなどのバランスが崩れることが原因だと考えられていますが、はっきりとは解明されていません。
症状としては
かゆみのない脱毛が頭部と四肢以外に起こります。
初期症状では、毛のボリュームがなくなったり、つやがなくなるなどの変化が起こります。
- 左右対称性の脱毛、被毛の病変
- 色素沈着
- 普通の治療ではあまり反応しない
カラー・ダイリューション脱毛症
遺伝的な要因が関与している脱毛症です。
これは薄色被毛の犬に認められ、ドーベルマン、ミニチュア・ピンシャー、ダックスなどに見られることがあります。
毛包の発育異常とメラニンの形成障害が原因であり遺伝的に起こります。
そのため進行性の脱毛がみられます。
また、被毛が薄くなるのに伴って、フケや発疹がでます。
頭部や四肢にはほとんど見られないのが特徴で、主に体幹に症状が現われます。
まとめ
犬は被毛によって様々な刺激から守っているため
皮膚は人間よりも強くありません。
そのため、様々な原因で脱毛が起こると二次的に細菌やノミ・ダニといった寄生虫の影響も大きく受けるようになります。
最近では室内で飼育される犬や猫の多くは、一年中抜け変わりがみられます。
これは人間と同じ環境で過ごすようになったため、暖房や照明によって季節の温度変化や光周期の刺激に狂いが生じているためです。
もし、脱毛が見られたら
早期に獣医師に相談するなどして、進行する前に対処するようにしましょう。