犬や猫の体は約60%(成犬・猫で約60%、幼犬・猫で80%)が水分で構成されています。
体液がたくさん失われると「脱水症」という状態になります。
脱水症というのは「水分と電解質が失われた状態」のこと。
脱水症はカラダにさまざまなダメージをもたらします。
体液の役割
栄養や酸素を運ぶ
口から入れた食べ物や飲み物の栄養素は、消化管から吸収されて体内に入ります。
栄養素は酸素とともに、血液に乗って細胞まで運ばれて、細胞と細胞の間にある体液に渡り、そこから細胞内の体液へ届けられます。
体液の種類
- 細胞内液 (細胞の内側にある水分)
- 細胞外液 (細胞の外側にある水分)
●組織間液
細胞と細胞の間にある液体
●血漿(けっしょう)
血液中の赤血球、白血球、血小板を除いた液体成分のこと。
透明で淡黄色の中性の液体です。
食べたものや飲み物などの栄養素は、消化管から吸収されて体内に入ります。
栄養素は酸素とともに、血液に乗って細胞まで運ばれて、組織間液で細胞のひとつひとつに届けられます。
老廃物や二酸化炭素を捨てる
エネルギーや栄養素は細胞で使われたことで老廃物や二酸化炭素などができます。
運んできたのと同じように細胞外液からだされて、尿や呼気によって外に排出します。
体液が減るとどうなる?
体から水分が失われると、血液の量が減るので、血圧が下がります。
その影響から肝臓や消化器など臓器に行きわったていた血液が減り、必要な栄養素を運搬したり、老廃物を回収するなどの処理能力が落ちてしまいます。
消化器官の血流が減れば食欲がなくなってしまいます。
脳は血流が低下すれば集中力や思考力が低下します。
電解質って?
わかりやすくいうと水に溶けると電気を通す性質のある物質です。
体液にはこれらの電解質(イオン)が含まれていてさまざまな役割を担っています。
- ナトリウムイオン
- カリウムイオン
- カルシウムイオン
- マグネシウムイオン
- クロールイオン
電解質の役割
電解質は細胞の浸透圧を調節したり、筋肉細胞や神経細胞の働きに関わるなど、身体にとって重要な役割を果たしています。
そのため、電解質(イオン)は少なすぎても多すぎても細胞や臓器の機能が低下し、命にかかわることがあります。
ナトリウムイオン
浸透圧の調整に関わるイオンなので、たくさん失われると体液が濃い部分を薄め、薄い部分を濃くしようとする浸透圧が維持できなくなります。
体の水分量の調整ができなくなってしまうわけです。
カリウムイオン、カルシウムイオン
神経の伝達や筋肉の収縮に関わるイオンなので不足した場合、脚がつったり、しびれや脱力が起こったりします。
カリウムイオン
神経や筋肉の興奮やその情報を伝達する働きがある。
- 血圧降下作用
- ナトリウムと協働して筋肉の収縮と弛緩を調節する働き
- 細胞内液の浸透圧を一定に保つ
カルシウムイオン
- 神経の興奮を鎮める働き
- 筋肉の収縮に必須
- 酵素の働きを活発にする
- ホルモンの機能を活発にする
これらの他にもさまざまな役割があり重要な物質です。
症状
脱水が起きて体液が、体重の数パーセントを超えて失われたとき、これらの症状が出ます
- 皮膚が弾力性を失い、皮膚をつまみあげてから離してもすぐにもとにもどらない
- 口や目の粘膜が乾いたようになる
- 目が落ちくぼむ
歯ぐきに変化が見られる
通常はうるおっている歯ぐきですが、脱水症状のときには水分不足のためにネバネバしています。
歯ぐきを白くなるまで押してみて、指をはなしたあとにピンク色に戻らなければ脱水症状だと考えましょう。
毛細血管再充時間が遅いということですので脱水症状の一つです。
10%以上水分を失う
脱水症状がさらにひどくなって体重の10%以上の体液が失われると、ショック状態に陥ります。
ショック症状はすでにかなり危険な状態で、死亡する可能性が高いです。
ショック状態
口の中や目のまわりが青白くなり、ぐったりしてほとんど動かなくなる。
意識障害やけいれんなどの症状がでます。
原因
すこし調子が悪くて、下痢やおう吐をする程度は軽症ですが、病気が原因でおう吐や下痢を引き起こしている可能性もあります。
おう吐や下痢は大量の水分を失うからです。
急性胃炎、感染症
これらは胃や腸の炎症のために下痢やおう吐を繰り返す症状がでるため、脱水症状が起こりやすいです。
急性腎不全
脱水をおこす病気のなかでも特に重い症状がでるのが急性腎不全です。
症状で見られるのは
- 食欲がなくなる
- 嘔吐・下痢による脱水
となります。
内臓機能障害により、脱水症状につながるケースです。
口の中も乾燥して、症状が重いと口の中のヌメリもなくなります。
尿毒症の併発
腎不全からさらに弊害が起こります。
血液の量が減少することで腎臓の機能が低下します。
すると老廃物や有害物質がが排出されず体内に留まることで、尿毒症をひきおこす恐れがあります。
尿毒症は最終的にはけいれんを起こしたり、昏睡におちいって死に至ることがあります。
慢性腎不全
慢性腎不全は、おう吐や下痢などの消化器症状が常にあるわけではありませんが、寝起き時におう吐が見られたり、あまり激しくない下痢が続くことがあります。
これらも脱水の原因となります。
熱中症
犬は寒さには強いですが、暑さに弱い生き物です。
夏に駐車中の車に閉じこめられたり、日陰のない炎天下にしばられていたイヌが、短時間で脱水を起こすことがあるので注意が必要です。
夏場の脱水の原因のひとつです。
熱中症になりそのまま放置すると、血液の混じったおう吐や下痢、けいれんなどを引き起こします。
治療
脱水症状が軽いうちに気づいたら、口から直接スポーツドリンクや砂糖を少しとかした水などを与えます。
あるいは点滴などによって水分や栄養分を補給すれば回復することもあります。
注意ポイント
ふつうの水を急に与えると体内の電解質のバランスがくずれ、かえって脱水症状がひどくなることがあります。
弱った胃腸に大量のお水を与える事で、胃腸を刺激し更に嘔吐と下痢を引き起こしてしまいます。
体力を消耗し、体温までも下げてしまいまうので、注意が必要です。
脱水時の水分補給
脱水症というのは水分と電解質が失われた状態のことです。
そのため、両方を補給しなければいけません。
また、脱水状態は危険な状態です。
素早く体内に吸収されることが大切になってきます。
経口補水液
最近はCMなどでも見るようになった経口補水液、脱水時の補給には有効です。
これはペット用に作られたものです。
ハイポトニック飲料と呼ばれるもので、体液よりも低い浸透圧になるよう作られています。
濃度の低い液体は濃度の高い液体へ移動する性質があります。
これが浸透圧です。
わかりやすく言えば飲んだら、とっても吸収されやすい飲料。ということである。
しかも、ブドウ糖が含まれているとさらに腸での水分とナトリウムイオンの吸収が良くなります。
覚えておこう。
経口補水液は使い方をちゃんと知ることが大切です。
塩分濃度が高いので、普段の水分補給には向いていません。
あくまでも脱水症状の軽度から中度くらいで使用するものです。
さらに一度にたくさん飲ませるのではなく、少量を時間をかけて摂取させます。
人間用で代用しよう
ペット用の経口補水液なんて、常備していることは考えにくいでしょう。
代用として、大人用のスポーツドリンクを1.5~2倍に薄めて与えると水分も電解質も補給できるので、脱水の時にはこれでもオッケー。
一応手作りも可能
水 塩 砂糖または、はちみつ |
1リットル 小さじ1/2 (3g) 大さじ4と1/2 (40g) |
脱水で時間もない場合、自分で作ることだって可能!
塩は天然塩であるほうがよい。ミネラルが豊富だからです。
はちみつも吸収率がよいのであるなら使おう。
このとき分量は正確でなくてよい。
水分と電解質が入っているかが重要なのです。
予防
予防する方法はそれほど難しいことではありません。
ちょっとしたことを改善するだけで予防になります。
生活環境を見直そう
犬の普段過ごしている場所に日陰はありますか?
犬は暑さに強くはありません。
常に日光にさられる環境に置かれたら、熱中症や脱水症状になってしまいます。
水もたっぷりと飲める環境にしましょう。
犬は汗をかきませんが、水分補給はとても大切です。
水分の多い食事をあげよう
尿の色が濃くてニオイも強い場合、水分が足りていな可能性があります。
普段の食事でも積極的に水分を摂取しましょう。
ドライフード、いわゆるカリカリは水分量が少なく作られています。
肉や野菜のスープをつけてあげたり、缶詰も水分が多いので一緒にあげると効果的です。
腸内環境の改善
脱水症の大きな原因の一つに下痢があげられます。
そのため腸内環境を整えることによって、下痢になりにくい体を作りましょう。
野菜や果物に含まれる水溶性の食物繊維は善玉菌を増やすことがわかっています。
しかし、犬はもともと肉食の祖先をもちます。
そのため野菜などの繊維が多いものの消化は得意ではありません。
ですが少し工夫すれば大丈夫
リンゴをあげよう
すりおろしたリンゴを温めてあげる。
すりおろすことで消化も良く、水溶性食物繊維がとれます。
野菜スープを作っちゃおう
しっかり煮込んだ野菜スープを作りましょう。
野菜がくたくたに柔らかくなるくらい煮ておけば、胃腸への負担がかなり軽減され、腸内環境も整います。
納豆をあげよう
腸内細菌を増やすなら納豆が一番のおすすめです。
おなかの環境を整えてくれます。胃酸にも強く、腸まで菌が届きます。
ひきわり納豆が消化吸収に良いでしょう。
ヨーグルトあげちゃう?
整腸作用といえばヨーグルトです。
効果的ですが、下痢をしてしまう子もいるでしょう。
牛乳を飲むと下痢をするのは乳糖が含まれているから。
ヨーグルトは乳糖が分解されていますが、残っていないわけではないので下痢をする可能性があります。
大丈夫な子もいるので様子をみて与えましょう。
ヨーグルトをあげるときは少し温めてあげましょう。
冷たいとおなかが冷えて下痢の原因になります。
また、低カロリータイプなどのヨーグルトには甘味料が入っているかもしれません。
キシリトール、マルチトール、ソルビトールは難消化性のため下痢に繋がる場合があります。