横隔膜は胸側とおなか側の臓器を分けるように存在する筋肉の膜です。
肺を動かす機能があります。
横隔膜ヘルニアはこの横隔膜が裂けたり、穴が開くことによって腹部側の臓器が胸の方に押し出された状態のことです。
その影響によってさまざまな症状が見られるようになります。
横隔膜の仕事
横隔膜はドーム状になっており、張り詰めた状態で肺の後ろに配置されています。
肺自体は動かない臓器なので、この横隔膜が薄い筋肉と腱から出来ているので、広がったり縮んだりすることで呼吸ができる仕組みです。
また、おなか側には臓器がたくさん詰まっているため、それらを隔てるように横隔膜は存在します。
ヘルニアとは?
そもそもヘルニアという意味ですが、体の内部でもともと穴や裂け目がない場所に、何らかの原因で穴や裂け目ができたことによって、中の臓器が他の場所へ飛び出してしまうことを言います。
これはケガや衝撃など、強い力によって破れたり、裂けたりして穴が開くことになります。
原因
横隔膜ヘルニアは何らかの原因で、横隔膜に穴が開いたり、裂けたりすることでおなか側にある臓器、肝臓や胃、腸などが肺の方へ押し出される状態です。
そのため、心臓や肺は圧迫されて機能しにくくなり、横隔膜もうまく動けません。
また、穴に挟まった状態の内臓は血流が悪くなり機能が著しく低下します。
このような状態が横隔膜ヘルニアです。
横隔膜ヘルニアの原因は、外傷などによるものと、遺伝的な先天性のものとで、大きく2種類に分けられます
外傷性
強い衝撃を受けることによって腹部側の圧力が上がって、横隔膜が破裂してヘルニアを発症します。
- 交通事故
- 高所からの転落
- 転倒
- 蹴られる
高い場所や階段から落下するなどして、床や壁に胸部や腹部を強くぶつけてしまって発症するケースが多く見られるようです。
ヘルニアが起こりやすい部分
- 血管や食道が通るために元々横隔膜に開いている穴
- 体と横隔膜のくっついている部分
この部分が破れるケーが多いようです。
先天性
生まれつき横隔膜の一部、もしくは全体が欠損しているため症状が起こります。
呼吸困難などが起こるため、成犬になれずに死亡する場合もあります。
遺伝的に起こりやすい犬種
- アメリカン・コッカー・スパニエル
- イングリッシュ・コッカー・スパニエル
- ワイマラナー
先天性の場合、はっきりとした症状があらわれず長期間経ってしまうことも少なくありません。
また、何らかの病気で検査をした時に偶然見つかったりします。
症状
ヘルニアは状態の重さや飛び出してしまった臓器によって症状が異なります。
そのため、軽い時には症状が出ない場合もあります。
重たい場合には様々な症状があらわれ、場合にはよっては突然死する場合もあります。
発見が遅れることも
多くの場合は事故などによるケガによってヘルニアが起こりますが、事故のキズが治って、しばらくしてからヘルニアが発見されることもあります。
そのため、数カ月たってから呼吸困難などが見られることもあります。
外傷性
しばらくははっきりした症状を示さず、気付かない場合があります。
しかし、事故のなどのように状態が重い場合には、事故や落下の衝撃などで横隔膜が破れたり、裂けたりして肺の方に多くの臓器が入り込んでくることで様々な症状が起こります。
腹部の臓器がヘルニアの方へ移動したために
- 吐き気
- 食欲不振
- 元気がなくなる
- おなかを触ると痛がる
心臓や肺が圧迫されたため
- 深い呼吸を繰り返す
- 立っていられない
- 前足を突っ張ってあえぐ
- 重い呼吸困難
- チアノーゼ(酸素が欠乏して舌や歯ぐきが青紫になる状態)
- ショック症状
などが見られ危険な状態です。
このような状態が見られる場合は、一刻も早い治療が必要になります。
腹部の臓器、胃や腸、肝臓などが穴の方へ押し出されるなどして圧迫されるとおう吐や腹痛などを引き起こします。
また、その他にも骨折やケガを伴う場合も多く見られます。
先天性
先天性の場合、症状がゆっくりと現れ、徐々に悪化することが多いです。
多くが離乳期から呼吸速拍症状が現れます。
- 呼吸の異常
- 疲れやすい
- 一度にたくさん食べることができない
- 成長不良
などが見られることが多いです。
治療
横隔膜自体が損傷しているため、基本的には外科手術が必要でそれ以外の方法で完治を目指すことは難しいでしょう。
呼吸の状態が悪かったり、ショック症状を起こしているような場合には、その状態が改善してから手術となります。
そのため、犬の呼吸が苦しそうなときには、両手で胸とおしりあたりを持ち、体が伸びないようにすると良いでしょう。
症状の悪化を防ぐことができます。
事故や落下の場合
事故などのように原因がはっきりしていると、症状を見たり聴診器での診断によって簡単に横隔膜ヘルニアを疑うことができます。
レントゲン検査によってヘルニアの程度やどのような臓器が関係したヘルニアなのかが、ある程度予測することができるため、早く対処することができます。
先天性の場合
先天性の横隔膜ヘルニアは無症状の場合もあり、他の病気の検査のためなどで、レントゲン写真を撮った時に見つかることがあります。
先天的の横隔膜ヘルニアの場合、手術で死亡する事が多くなっています。
予防
事故や落下などの後天性の横隔膜ヘルニアは、発症が遅れて現れる場合があります。
そのため、交通事故などにあった場合には、大丈夫そうだと思っても獣医師の診断を受けるようにしましょう。
大きな衝撃は外傷がなくても、内側にダメージを与えているかもしれません。
これらの症状が見られたら、異常を疑うべきでしょう。
- 安静時でも呼吸が荒い
- お散歩から帰ってきて呼吸がおかしい
- 高いところから落下してから呼吸がおかしい
- 運動後に呼吸が苦しくなるような症状がある
- 他の兄弟に比べると成長が遅い、食べる量が少ない