マダニは吸血のさいには血液を濃縮して、水分やいらない成分を動物の体内に唾液と共に吐き戻しています。
唾液には血液が固まってしまわないようにする為の成分が含まれていますが、このときにウイルスや細菌、病原体なども一緒に注入されてしまうのです。
マダニによる感染症を”マダニ媒介性感染症”と言います。
これが思ったよりも重大なことなのです。
アレルギー性皮膚炎
ダニの唾液に対してアレルギー反応が起こり皮膚炎になります。
強いかゆみや赤みなどの症状が出ます。
貧血
マダニは血液を吸うと、濃縮して成分だけを奪って水分やミネラルを唾液と共に吐き戻しています。
そのため小さなマダニですが、何匹もいると鉄分が減り貧血が起こります。
バベシア症 バベシア原虫
マダニを介して感染するバベシアという顕微鏡で見ないと見えないサイズの原虫が原因です。
バベシアは体内の赤血球内部で生育し、最終的に赤血球を壊すため、重度の貧血に陥ります。
そしてどの犬種もかかる可能性があります。
病原性の弱いバベシア症が多く発生しています。
- 関西以西の西日本
- 四国
- 九州
- 沖縄
- 東日本以北(近年見られるようになっている)
マダニが吸血を始めて48時間程度で感染すると言われている。
ペットの症状
感染してから2~3週間で症状が現れます。
- 元気食欲の消失
- 発熱
- 貧血 (歯ぐきや舌の色が白い)
- おしっこの色の変化 (濃い色になる)
- 下痢・嘔吐
重症の場合
重度の貧血・黄疸・多臓器不全が起こり、治療が遅れると死に至る場合もあります。
人の症状
40歳未満の健康な人などでは、目立った症状があらわれない場合もあります。
発祥するとこれらの症状が見られます。
- 発熱
- 頭痛
- 筋肉と関節の痛み
- 疲労感
- 赤血球が破壊されることによる貧血
- 肝臓や脾臓が腫大することもある
ちなみにバベシアは70種類以上あって、犬バベシアで人間が発症することはないのだ。
治療法
現在、特効薬は見つかっておらず薬による完治が難しい病気です。
また、一度感染すると完全に除去することは難しく、症状が治まってもバベシア原虫が体内に残っていることで、再発がみられる場合があります。
予防が大切!!
人間の場合
健康な人で軽度の場合は自然治癒するので特に治療はいりません。
ただし一度感染してしまった場合「献血をご遠慮ください。」に該当してしまいます。
ライム病
ライム病は、感染した全ての犬に症状が出るわけではなく、感染した犬のうち約5%が発症するといわれています。
その多くは「関節炎」を起こし、四肢に触られるのを嫌がったり、足を引きずったりします。
これらの症状が見られます
- 発熱
- 食欲不振
- 元気消失
- リンパ節が腫れる
- 体重の減少
- 歩行障害
- 触ろうとすると抵抗する
- 急性腎不全
基本的に命を脅かす症状ではありませんが、放置しておくとこのような合併症を引き起こすことがあります
- 糸球体腎炎
- 心筋炎
- 心膜炎
人間の症状
マダニに刺されてから発症するまで数日から数週間です。
マダニに刺されたところを中心とする環状の紅斑が見られることが多い。
紅斑は日を追うごとに大きくなり、数十センチ程度の大きさになる場合もあります。
そのほかにも
- 筋肉痛
- 関節痛
- 頭痛
- 発熱
- 悪寒
- 倦怠感
これらのようなインフルエンザに似た症状を伴うこともある。
体内循環を介して病原体が全身性に拡散するとこれにともない、多彩な症状が見られる。
- 数週間~数カ月後
顔面神経麻痺、髄膜炎、心疾患などの全身障害を起こします。
- 数カ月~数年後(紅斑がでてから)
慢性萎縮性肢端皮膚炎、慢性関節炎、慢性脳髄膜炎などを発症します。
重症熱性血小板減少症候群(SFTS)
動物も人間も感染しますが、発症するのは現在のところ人間だけです。
しかし、動物は保菌している可能性があります。
近年ニュースでも話題になったマダニによって感染する病気です。
SFTSウイルスを保菌しているマダニに吸血されると、ウイルス入りの唾液が体内に入り込んでしまい感染します。
保菌していたペットの次に同じダニに寄生されると感染することになります。
潜伏期間 6日~14日程度
症状
- 発熱、消化器症状(食欲低下、嘔気、嘔吐、下痢、腹痛)が多くみられる
- 頭痛
- 筋肉痛
- 意識障害、失語などの神経症状
- リンパ節腫脹
- 皮下出血や下血などの出血症状
感染経路
マダニによるものが中心ですが、血液などの患者体液との接触により人から人への感染も報告されているので注意が必要です。
治療法
現在、有効な薬剤やワクチンがありません。
そのため致死率は6.3~30%と報告されています。
危険ですね。
治療は対処療法しかありません。
本人の抵抗力で頑張るしかないということです。
Q熱
犬や猫などはほとんど発病しない。
人間の場合
コクシエラ・バーネッティイという細菌に感染することで発病します。
感染ルートはマダニに咬まれたり、ダニの糞などを吸い込むことでも感染します。
ヒトは大変感染しやすく病原菌1 ~ 10菌体程度侵入されると感染が成立する。
もちろん、ダニが菌を持っていた場合です。
症状
- 高熱
- 激しい頭痛
- 悪寒
- 筋肉痛
- 混迷
- 咽頭痛
- 発汗
- 乾いた咳
- 嘔気
- 嘔吐
- 下痢
- 腹痛
- 胸痛
上記の中からから一つ以上の症状が急激に出現する場合が多いです。
発熱は2日ほどのこともありますが通常1~2週間続き、体重が減ります。
一般に予後は良いが、急性のQ熱の死亡率は約1~2%である。
日本紅斑熱
マダニが日本紅斑熱リケッチアという細菌を保菌しているものがいて、それに刺されると感染します。
ペットに症状は現れないので人間だけ注意ですね。
人間の症状
刺されてから2~8日後に症状が現れます。
- 頭痛
- 全身倦怠感
- 関節痛
- 筋肉痛
- 高熱(39℃程度)
- 発疹
体内の異常
- CRP陽性
- 白血球減少
- 血小板減少
- 肝機能異常
重症化すると痙攣、意識障害を併発するさらには死亡することがある。
治療法
抗生物質がとても効果的。
放置しないできちんと医療機関を受診することが大切です。
野兎病(やとびょう)
読んで字のごとくウサギから感染する病気です。
原因はグラム陰性小桿菌という菌なのですが感染力が非常に強力です。
多くの場合は野ウサギを食べる為に皮を剥いだり、調理の際に感染することが多いです。
しかし、ニワトリや犬、猫も感染します。ウサギだけじゃないんですね。
また、ダニが保菌していることがあるので刺されることで感染します。
ペットの症状
- 発熱
- 食欲不振
- リンパ節が腫れる
重症化すると敗血症を起こして死亡することもあります。
人間の症状
3日~7日の潜伏期間の後に発症します。
- 突然の発熱(38~40℃)
- 悪寒
- 頭痛
- 筋肉痛
- 関節痛
これ等の症状が全身に見られます。その後、長期化する。
特徴
感染力が極めて強い。
目などの粘膜や皮膚のごく小さな傷からも感染します。
さらに、健康な皮膚からでも侵入できるのです。
そのためペットに付着したマダニを取った後、指でつぶして体液が目に入ったり、つぶした指から感染するします。
もしやってしまった場合は素早く石鹸を使って洗い流しましょう。
野兎病の治療
抗生物質よく効くがセフェム系とペニシリン系の抗生物質は野兎病の治療には効かない。
放置すると長期化するので異常が起こった場合、必ず病院に行きましょう。
マダニ被害からの予防
犬や猫が屋外から帰ってきたときにマダニがついていないかチェックするとこは大切な予防法ですが、吸血前の小さなマダニは肉眼で見るには小さすぎます。
毎月のノミダニ駆除薬やシャンプーをしたりしましょう。
散歩のあとのブラッシングも物理的に落とすことができるので効果的です。