ウイルス性感染症

ジステンパー

急性で高熱を発するウィルス性感染症の代表的な病気で、伝染力が強く、かつ死亡率の高いおそろしい病気です。

初期にはおもに高熱、下剤、 肺炎など消化器と呼吸器の障害が現れ、後期には神経がおかされます。
1歳未満(とくに生後 3〜6カ月)の幼若犬がかかりやすいのですが、成犬でも発病します。

イヌ科動物に対して高い感受性を示すが、一方でネコ科・イタチ科・アライグマ科・スカンク科・アザラシ科・ジャコウネコ科など、ほとんどの食肉目の動物に感染する。

ヒトには感染しない。

 

 

症状

ジステンパーウイルスに感染すると、4~6日後ぐらいに発熱、食欲不振などの症状が現れます。
しかし、程度はごく軽く、2~3日もすると治ってしまう
ため、「かぜかな」と思う程度で見過ごしてしまいます。

免髪力の強い成犬などでは、 そのまま治ってしまうこともかなりあります。

しかし、子犬や高齢犬など免投力が弱くウィルスを撃退しきれないでいると、弱った体力につけこまれ、さまざまな細菌に二次的に感染してしまいます。

それによって症状が悪化し、二次感染の影響も重なって、さまざまな症状が現れてきます。
多くの場合、この二次感染期にシステンパーが発見されます。

 

 

一般症状

  • 発熱
  • 食欲不振
  • 元気がなくなってやせてくる
  • 結膜炎・角膜炎による膿性の目ヤニが出る

 

 

神経症状

ジステンパーウィルスの感染によって脳の神経細胞が侵されます。
多くの場合、生後6ヶ月以内の犬がかかります。

  • やたらに興奮する
  • てんかんのような発作を起こす
  • グルグル回転したりする
  • 暴走したりする
  • 体のあちこちがピクッピクッと短い間隔でけいれんするチック症状
  • 動作の異常
  • 下半身のまひ

症状が進むとけいれんを起こして倒れ、泡をはき失禁します。
この症状をたびたび繰り返すようになり、次第に食欲がなくなって体力が落ちていきます。

このような神経症状は、ジステンパーにかかった犬20〜25%に現れます。

 

呼吸器の症状

鼻の頭が乾いてかさかさになる。
くしゃみや咳、鼻水が多くなる。
呼吸は早くなり、気管支炎を併発することがあります。

 

消化器の症状

おう吐や悪臭をともなう下痢や血便が出る。
おなかを押さえると痛がる。
腎臓の働きが低下し、尿の色が濃くなります。

 

皮膚の症状

下腹部から後ろ足のつけ根にかけて、米粒~小豆大の膿をもったできものができます。

 

 

原因

ジステンパーは、イヌジステンバーウイルスというウイルスに感染することによって発病します。
このウイルスは、イヌの目や鼻から体内に侵入します。

口や鼻から入ったウィルスが、体の組織の中に入って全身に広がっていき、さまざまな臓器をおかしていきます。
放置しておけば、最終的には脳まで障害をきたしてしまいます。

 

 感染ルート

飛沫感染
ジステンパーにかかったイヌのくしゃみの飛渉などを浴びる。

直接感染
感染したイヌの鼻水や目やに、尿などに口や鼻がふれて感染します。

間接感染
ウイルスが付着した食べものなどを介して間接的に感染することもあります。

 

 

治療

ジステンバーウイルスに対して有効な治療薬はいまのところありません。

ジステンバーと診断されたら、入院して対症療法を受けることが必要です。
感染のごく初期では免疫血清の大量投与が効果を示すこともあります。

 

二次感染菌をおさえるため、各種のサルファ剤、抗生物質、副腎皮質ホルモン薬などの薬が使われます。
またビタミン剤も併用します。

それぞれの症状に対しては利尿薬、整腸剤などを投与して治療します。
神経症状がある場合には、抗てんかん薬や脳代謝賦活剤などを用います。

 

脳代謝賦活剤(のうたいしゃふかつざい)とは?

脳の機能、とくに思考能力の改善を目的に使用する薬剤です。
脳卒中やその後遺症としての痴呆、意欲低下、情緒障害、そのぼかさまざまな自律神経症状の改善などに用いられます。

脳細胞に直接働きかけて代謝を活発にさせるものを脳代謝改善薬、脳の血流状態を良好にして間接的に脳細胞の代謝を改善するものを脳循環改善薬と呼びますが、両者を兼ねるものもあり、通常は、脳代謝賦活薬あるいは脳循環・代謝改善薬と総称されます。

 

 

予防

何といってもワクチン接種を受けておくことです。
現在では、 ジステンパー予防にはジステンパーワクチンの単独接種ではなく下記の感染症を
同時に予防するため、3種混合、5種混合、7種混合、9種混合などのワクチンが接種されます。

 

 

 

ワクチン接種のタイミング

子犬は、産まれすぐに飲む母乳(初乳)から母犬の抗体を受け継ぎます。
この抗体は生後2~3カ月間は子犬の体内に残ります。

母犬の初乳を十分に飲んだ子犬の場合
移行抗体が消失する生後3か月前後にワクチン接種を行うのが適しています。

母犬の初乳の出が悪かったり、初乳を飲んでいるかどうかかはっきりしないとき
生後9週目で第一回の接種をして、生後15週目に2回目の接種をします。

初乳を全く飲んでいない子犬
生後2週目から始めて2週間ごとに14週まで、断続的に接種するのが理想とされています。

 

次からは年1回

その後は、いずれの場合も1年1回の追加接種が確実な予防法となります。

ジステンパーは死亡率の高い大変危険な病気ですが、現在ではワクチンがあるため十分に予防することができます。

しかし、地域によっては、いまでも散発的に発生しているので注意が必要です。

 

それでも発症することもある

ジステンパーはワクチンをしていても発症することがあります。

理由としては、下記のようなものが考えられます。

  • ワクチン接種の時期が適切でなかった
  • ワクチンの保管が不完全だった
  • 犬の免疫力が増強されなかった

生後2ヶ月半以内にワクチンを接種しても、多くは効果がありません。

 

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