皮膚病

犬のアトピー性皮膚炎


アトピー性皮膚炎とは様々な原因が引き金になって発症する病気です。
「多因子性の疾患」と呼ばれるものです。

アトピー性皮膚炎を悪化させる要因と言われているものは、ダニ、ホコリ、気候、食事、ストレス、大気汚染などたくさんあります。

だだ、どれか一つの要因でアトピーが発症しているわけではなく、いろいろなものが複雑に重なり合っている可能性もあります。

 

症状

初期段階では季節性があると言われています。
発症しはじめの頃は、春だけ痒がるなど、ある季節に痒みが生じますが、年月を経ると、だんだん痒みが慢性化し、一年中痒がるようになります。
症状は年々悪化する傾向があるようです。

 

  • 激しいかゆみから、ひっかく・こすりつける・なめる
  • 患部の乾燥
  • 皮膚の発疹やただれ
  • 皮膚が赤くなる
  • 黒く色素沈着が見られる
  • 苔癬化(たいせんか)皮膚が硬く分厚くなる
  • 脱毛

強い痒みから傷口ができやすく、そこから合併症起こりやすいです。

アトピー性皮膚炎発症年齢は3カ月~6歳ぐらいです。
約70%が3歳以下、約85%が5歳以下です。

 

 

皮膚の薄いところに出やすい

  • 足の先
  • 脇の下
  • おなか
  • 足の付け根

 

かかりやすい犬種

遺伝的な特徴などから発症しやすい犬種が存在します。

  • 柴犬
  • シー・ズー
  • ゴールデン・レトリーバー
  • ラブラドール・レトリーバー
  • シェットランド・シープドッグ
  • ウエスト・ハイランド・ホワイト・テリア
  • ダルメシアン
  • ボストン・テリア
  • ブルドック
  • ボクサー

などなど

 

原因

アトピー性皮膚炎はアレルギーの原因物質が皮膚に接触したり、呼吸器を通して体内に侵入したとき、それを排除しようとする免疫システムの過剰反応による症状がでる病気です。

また、長期間皮膚に加わる強い刺激やストレス、疲労なども免疫を不安定にしてアトピー性皮膚炎を悪化させることがあります。

アレルゲン(抗原 = 免疫反応を引き起こさせる物質の総称)

  • ほこり
  • カビ胞子
  • ノミ、ダニ(フン、死骸もふくめて)
  • フケ
  • 花粉

 

こんな風に起こります。

皮膚の最も外側で身体を守っている部分を「角層」といいます。
この角層の厚さはおよそ20ミクロン、台所のラップとほぼ同じと思ってください。
角層は「スキンバリア」と呼ばれていて外部からの刺激や遺物から体を守る大切な役割を担っています。
しかし、ここに保湿力がなかったりして乾燥することにより
スキンバリアにほころびが生じてしまいます。

 

すると、このほころびのすき間に、異物が侵入しやすくなってしまいます。
ここでいう異物は、ダニのフンやハウスダスト、花粉などの抗原もですね。

 

発症の流れ

1.スキンバリアがほころんでいる状態で、さまざまな抗原がきてしまう。

2.排除するために体の免疫システムが活発に働きリンパ球を送り出す。

3.リンパ球は毛細血管を通って異物のほうへ向かいます。

4.その際、炎症物質をまき散らしながら攻撃を開始する。

5.その結果、炎症からかゆみを感じてかきだそうとする。

6.かいてしまうとさらに皮膚が荒れてスキンバリアのほころびが増える。

7.抗原が入りやすくなり、さらにリンパ球が活発になる。

 

このような流れでどんどんエスカレートして広がっていき、止まらない炎症とかゆみが続くアトピー性皮膚炎になります。

かゆみから傷口ができ二次感染症も併発するというわけです。

 

 

 

治療

スキンバリアを治そう

免疫システムは「二次的な要素」として反応として敏感に反応しています。
まずは、その前のスキンバリアを治すことで免疫システムの反応を引き起こさせないことが重要です。

 

アトピー性皮膚炎が発症する直接の原因は「スキンバリアがほころぶこと」
ほころびさえなければ免疫システムが過剰に反応することはないということになります。

 

負のスパイラル

  1. 患部を舐める・噛む・ひっかく
  2. 患部が赤くなる・毛が抜ける・黒く色素沈着
  3. 複数個所が皮膚炎になる
  4. 掻いた傷口から二次感染する

 

シャンプーをしよう

動物の皮膚は人と違い、毛に覆われているのでバリア機能低下を改善させる保湿ローションや全身に外用薬を用いる事は困難です。
そのためシャンプーも一定の効果があります。

 

洗浄効果
シャンプーすることで皮膚表面のアレルゲンや増えすぎた雑菌、余分な皮脂や角質などを除去できる。

保湿効果
肌のうるおいを与え保湿効果のあるシャンプーを使う。

 

サプリメント

サプリメントも一定の効果が期待できます。

  • オメガ3脂肪酸(α-リノレン酸、EPA、DHA)
  • オメガ6脂肪酸(リノール酸、γリノレン酸)

これらの必須脂肪酸を多く含んだ療法食や動物用のサプリメントは、アトピー性皮膚炎でのカユミを抑える効果や皮膚のバリア機能の修復なども期待できます。

 

痒み対策

皮膚の炎症が続くとそれに伴ってかゆみも持続し、さらに引っかいてしまうことにより炎症が悪化し、バリア機能もさらに低下します。
そのため、外からの刺激をますます受けやすい状態になります。

 

悪循環を食い止めるためのポイント

  • できるだけ早くしっかりと炎症を抑えること
  • うるおいを保つスキンケア
  • 皮膚への刺激を減らすこと

これらを行うことが症状コントロールのポイントとなります。

 

抗炎症剤によるかゆみ対策

“抗炎症剤”を使って、ペットの痒みを抑えてあげましょう。
抗炎症剤の代表的なものとして、ステロイドや抗ヒスタミン剤が挙げられます。

 

ペットと抗ヒスタミン剤

痒みの元のひとつであるヒスタミンが体内で作用するのをブロックするお薬です。
軽度のアトピー性皮膚炎に使用される場合が多いようです。

ただし単独で使用して症状がなくなることはまれで、補助的にステロイドと一緒に使用すればステロイドを減らすことができます。

 

良い点
ちなみに犬では抗ヒスタミン薬の副作用がほとんどありません。
第一世代の抗ヒスタミン薬は、人では「眠くなる」という副作用がありますが、犬ではたまに見られる程度です。
また他の薬剤に比較して比較的安価です。

 

欠点
最大の欠点は、有効率が低いということです。
文献によると約30%の犬にしか効果がないと言われています。
効果があったらラッキーですね。

 

また注意したいのは、人用の第二世代の抗ヒスタミン薬は犬には使ってはいけないということです。
アメリカでは死亡例が出ています。
安易に花粉症などで処方された人用の薬を動物に与えないようにしてください。
あげないとはおもいますけどね。

 

ステロイド薬

ステロイド薬がアトピー性皮膚炎に効く仕組み

スキンバリアから侵入した抗原により、退治しようとリンパ球が活発に活動しています。
そのため、毛細血管からしみだしてバンバン炎症物質を出しています。

 

ステロイドを使うと・・・

 

ステロイド薬は強力に炎症を鎮める効果があります。
また免疫システムを抑える効果もあります。

  • 症物質をまき散らしているリンパ球を抑える。
  • 拡張した毛細血管を縮めて新たにリンパ球の援軍を送れなくする。

これにより皮膚の炎症がおさまってかゆみも止まる。
かゆみが収まるとかくことも減って、次第に角質が回復するという流れになります。

 

 

アトピー性皮膚炎の薬

アポクエル

オクラシチニブマレイン酸塩を有効成分とした犬専用の薬剤です。
特徴はアレルギー性皮膚炎にともなう、かゆみや赤み、腫れなどの症状を緩和するお薬で、長期的な治療が必要となるアトピー性皮膚炎の症状にも優れた効果を示します。

また、高い即効性をもつ経口摂取タイプのお薬です。
摂取後4時間ほどでかゆみを緩和する作用が始まり、その効果が24時間持続します。
なお、従来のステロイド系の薬剤のような副作用は比較的少ないとされています。

 

使い方

体重1kgあたり0.4~0.6mgが目安です。

錠剤のサイズが3種類
1箱 20錠

3.6mg L2-fl05-02
5.4mg L2-fl05-10
16mg L2-fl05-03

 

アトピカ

 

犬、ネコのアトピー性皮膚炎などの皮膚疾患や自己免疫症疾患の免疫抑制剤です。

アレルゲンに対して過剰に反応してしまう免疫系皮膚細胞の働きを抑制し、皮膚の赤みやかゆみなどのアトピー性皮膚炎の症状を緩和します。

 

有効成分 シクロスポリン

体の免疫をおさえるお薬です。
本来、“免疫”は、細菌やウイルス、異物などから体を守るための自然な防衛システムですが異常が起こると自分自身の組織を攻撃してしまいます。
自己免疫病や膠原病も、免疫の異常により起こります。

アトピーは免疫機能が過敏になりすぎている状態です。

 

1日1回体重1kgに対してシクロスポリン5mgを基準量とします。
錠剤のサイズ別で3種類

25mg L2-fl05-03
50mg L2-fl05-06
100mg L2-fl05-02

 

アトピカにはジェネリック薬があります。

アトピカ ジェネリック

アトピカは犬のアトピーなどの際にもらうお薬です。 免疫を抑制してアレルギー反応を抑えることで、かゆみを抑えることができます。 アトピカのジェネリックを集めてみました。   有効成分シクロスポ ...

 

 

予防

アトピー性皮膚炎という病気自体は遺伝することはありません。
しかし、アトピー性皮膚炎になりやすい体質、発症しやすい体質は遺伝する可能性はあります。

 

スキンケア
やはりシャンプーと保湿が基本となります。
ワンちゃんと人の皮膚を比較すると、犬の皮膚はとても薄く人よりデリケートです。

従って最低1週間に1回犬用のシャンプーで清潔にすることをお勧めいたします。

 

原因物質の除去
最も一般的なアレルゲンは、ダニ、ハウスダスト(ホコリ)、カビや花粉などです。
中でもダニは、アレルギー疾患を引き起こす最大のアレルゲンです。

ダニの数を減らし、皮膚から侵入するアレルゲンをいかに食い止めるかが重要なポイントとなります。

寝具や小屋など生活環境をこまめに掃除しましょう。
スポット薬なども有効です。

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